リクルートワークス研究所は、報告書「なぜ転職したいのに転職しないのか」を発表した。報告書のPART.2では、「35歳転職限界説」など、転職にまつわるさまざまな「都市伝説」について再検証している。
リクルートワークス研究所は2023年10月19日、報告書「なぜ転職したいのに転職しないのか」を発表した。同研究所は毎年、全国約5万人の同一個人の就業実態を追跡調査する「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を実施している。同報告書はこの結果を分析したものだ。調査対象は、例年のJPSED対象者かつ2018年以降に転職したことがあるまたは転職意向があると回答した15歳以上の男女で、2万1930人の有効回答が得られた。
本記事では、報告書のPART.2「転職の都市伝説は、今も存在しているのか」の内容を紹介する。転職市場や転職希望者の間では、「35歳転職限界説」など、転職にまつわるさまざまな「都市伝説」が存在する。その真偽を検証することで、転職希望者の不安を少しでも和らげ、転職を妨げる課題をあぶり出そうというのがPART.2の狙いだ。
まず、「ブランクの期間が長くなると再就職は難しくなるのか」について、離職してからの無就業(ブランク)期間ごとに就業状態を調べた。
「離職から1カ月時点」では、60.7%が再就職していた。「仕事を探している人(失業者)」は14.1%、「仕事を探していない人(非労働力)」は25.2%だった。その後を見ると、「就業者」の割合は、離職からの期間が長くなるにつれて高まっている。しかし、就業率は半年を過ぎた頃から頭打ちになっており、この結果だけを見ると「ブランクが長くなるほど再就職は難しくなる」と言えそうだ。
だが、「無業の人が再就職活動をしているか否か(再就職活動確率)」と「再就職活動をしている場合に再就職したか否か(再就職確率)」に分けて分析した結果、仕事を探している場合は、離職から「3カ月以内」の再就職確率が、「ブランクなし(基準)」に比べ15.6%低かった。「4カ月以上6カ月未満」は基準から−21.4%まで下がり、「6カ月以上」は緩やかな推移となっている。この結果から、ブランクが長くなると仕事に就きにくくなるのは、離職後半年までで、それ以降のブランクの影響は大きくないようだ。
離職から半年を過ぎた頃から就業率が頭打ちになる理由は、ブランクが長くなるほど再就職活動が緩慢になり、就業率が上がらなくなることが考えられる。無業の人の再就職活動確率を見ると、ブランクが長くなるほど下がり、ブランクが「2年以上」になると、「ブランクなし」の場合に比べ、活動する確率が50.2%低くなっていた。
次に、「35歳を過ぎて転職すると年収が下がるのか」を調べた。転職者が転職したときの年齢別に転職前後の年収変化の平均額を見ると、「15〜29歳」は13.2万円、「30〜34歳」は12.4万円、前職より年収が増えていた。「35〜39歳」も8.7万円、「40〜49歳」は7.5万円増えており、35歳を過ぎても転職による収入は増加傾向にあった。
しかし、「50〜59歳」は、転職で年収が「10%以上」増加した人は34.9%、「±10%未満」は32.9%、「10%以上減少」は32.2%となっており、49歳以下の世代に比べると年収が減った人が増えている。「60歳以上」では、その傾向がさらに強まっていた。
転職による収入は、40代までは増える傾向が見られ、35歳以降の転職で年収が10%以上下がる割合は35歳以前と同程度だった。こうしたことから、「35歳を過ぎての転職でも、必ずしも年収が大きく下がるとは限らない」が、35歳を過ぎると転職そのものの難しさがある点は留意が必要といえる。
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