インダストリー4.0に象徴されるデジタル技術を基盤としたデータによる変革は、製造業に大きな変化をもたらしつつある。本連載では、これらを土台とした「インダストリー5.0」の世界でもたらされる製造業の構造変化と取りうる戦略について解説する。第3回はインダストリー5.0においてキーコンセプトとなってきているGAIA-Xや、Catena-Xなどのデータ共有ネットワークの動向について紹介する。
本連載では、「インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略」をテーマに連載として、拙著『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)や『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社)、『メタ産業革命〜メタバース×デジタルツインがビジネスを変える〜』(日経BP/2022年10月20日出版)の内容なども踏まえ、これからの製造業が捉えるべき構造変化と、取りうる戦略について以下のような流れで解説している。
前回は、インダストリー4.0を土台として進む「インダストリー5.0(第5次産業革命)」について解説した。第3回となる今回は、インダストリー5.0においてキーコンセプトとなってきているGAIA-Xや、Catena-Xなどのデータ共有スペースやそれに伴うエコシステム構築の動向について紹介する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウン、半導体不足や各種部材の高騰、ウクライナ危機や米中貿易摩擦などにより、サプライチェーンが予想外の外圧により分断される事態が頻発する中、レジリエンスが大きな論点となってきている。これらの予測できないさまざまな課題に対し柔軟に対応するためには、サプライチェーンに関わる企業が企業間の垣根を超えたデータ連携を行うことが前提となる。
こうした必要性を背景にデータ連携の加速が求められる中で、欧州を中心として企業を超えたデータ共有ネットワークの構築が進みつつある。第1回で紹介したインダストリー4.0は企業とそのエコシステム(生態系と呼ばれるパートナー)間での「閉じた」デジタル化であったが、インダストリー5.0時代においてはデジタル化の在り方が変わる。よりオープンなサプライチェーンや、企業間、産官学の壁を超えたデータ連携へ力点がシフトしつつある。
例えば、インダストリー5.0のキーコンセプトの一つに「サステナビリティ」がある。自社のみならずサプライチェーン全体(Scope3)でのCO2(二酸化炭素)排出量のマネジメントが求められるようになってきている。また、今後人権に配慮したモノづくりなどコンプライアンスを守ったフェアトレードが問われる中、こうした情報も含んだ取り扱うトレーサビリティーも重要となる。その観点で、新たなイノベーション創出の「攻め」の部分とともに、規制対応はじめ企業が既存のビジネスを存続するための必須要件となる「守り」の部分でも、データ共有がグローバルで加速度的に議論されているのだ。
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