IDSA(International Data Space)は、「データ主権」を担保したデータ共有の標準やルールの策定を目的とし、22カ国以上に及ぶ自動車、通信、化学、金融、鉄道、ITなどの幅広い業界から130以上の企業や組織が参画している組織だ。既にIDSAが策定した枠組みを生かした60以上の事例が生まれている。もともとは2014年にフラウンフォーファー研究機構を中心とした産学官連携のプロジェクトとして始まり、2016年にIndustrial Data Space」として組織が設立された。その後、現在の「International Data Space」に改称されている。
IDSAが重視するデータ主権(Data Sovereignty)とは、データに関する権利を明確化しデータの提供者の意図が反映された形で、共通ルールで安全かつ公正にデータが管理できるようにすることを目指したものだ。その運営は情報セキュリティに加え、データが提供者の意図した相手にのみ届けられ、意図した目的でのみ使われることを保証できるようにする。またデータ利用者も提供者の都合で突然データが削除されたり改ざんされたりせず利用できることなど、データに関係する各者の権利を明確化し、それを保証する。ISDAだけでなく欧州発で展開されているデータ共有基盤はこの「データ主権の担保」がキーワードとなっている。
IDSAをはじめ、後述するGAIA-Xや、Catena-Xにおいてもコネクターと呼ばれるデータ共有のためのオープンソースのゲートウェイが重要な技術要素となる。IDSAにおいてこのゲートウェイの役割として位置付けられているのが「IDSコネクター」だ。
IDSコネクターでは、あらかじめ定義された認証方法やデータ分類などに基づいてデータアクセスを制御(許可/ブロック)するゲートウェイ的な機能を持つ。このIDSコネクターを、例えば、データを送受信するクラウド、エッジコンピュータ、デバイスなどに実装する。このIDSコネクターを実装したもの同士でデータをやりとりすることで安全や信頼を保証し、セキュリティやデータ主権を保ったデータ流通を可能とする。またさまざまな既存クラウドサービスとの相互運用性も確保できるようになる。
IDSAでは現在既に50以上のデータ共有のユースケースが生まれており、その領域は製造から、サプライチェーン、モビリティ、エネルギー、金融、農業、医療、スマートシティー、防衛など多岐にわたる。下表がその一部であるがIDSAのデータスペースのユースケースの一例だ。
また、IDSAではデータ共有ネットワークをマッピングする「Data Space Radar(データスペースレーダー)」を公開している。これは、データスペースをドメイン、成熟度、進捗度でマッピングしている。このようにIDSAの標準にもとづくデータ連携の取り組みが世界中で加速度的に展開されているのだ。
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