ドイツをはじめ欧州では、企業や業界を超えてデータ共有を行うデータ共有基盤の構築と、その基盤を活用した新たな付加価値創出および競争力向上を図る枠組みが産学官で強力に推し進められている。
ドイツのフラウンフォーファー研究機構(欧州最大の応用研究機関)を中心に設立された「インターナショナル・データ・スペース・アソシエーション(IDSA)」や、ドイツ、フランスとEUが中心となりIDSAとも連携する「GAIA-X」などが登場している。さらに、これらの取り組みを自動車領域に特化して構築されたデータスペースの「Catena-X」の構築や展開も進んできた。ドイツや欧州における産官学のリソース投入はこれらデータ共有基盤へと集まってきており、インダストリー4.0の次の姿である「インダストリー5.0」におけるキーコンセプトとなっている。
欧州のデータ共有ネットワークの背景には米国や中国への対抗がある。米国のGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)や、中国のBATJ(Baidu、Alibaba、Tencent、JD.com)は膨大な投資を行い、また自国市場の大きさから巨大なプラットフォームを形成している。ドイツや欧州勢としてはメガプラットフォーマーがデータを独占することに懸念を持つとともに、その対抗策として新たな競争軸を打ち出していくことを考えている。そこで、先述のサステナビリティやサプライチェーン分断などの課題に当てたデータ共有基盤の取り組みを進めているわけだ。
例えば、後述するIDSA/GAIA-X/Catena-Xなどのデータ共有圏創出の取り組みの他にも、ドイツの自動車メーカーであるVolkswagenが「Volkswagen Industrial Cloud」を展開し、BMWが「Open manufacturing platform」を展開しているようにサプライチェーンや異業種をつなぎ、デジタル上での連携を図る「デジタルケイレツ」を作る動きが欧州で進んでいるといえる。こうした中で、日本としてどのような戦略をとるべきかが問われている。その方向性については後述する。
欧州委員会は2020年2月に「A European Strategy for Data」を発表しており、そこでもデータ共有基盤(Data Space)の重要性を強調している。具体的には「European data space」いう概念をビジョンとして掲げ、これにより世界中に開かれたデータマーケットを創出し、個人データやビジネスデータなどに簡単にアクセスして、新たな価値を創造できるとしている。またCO2排出量の観点から見た場合も、これらの削減につながる点などを訴えている。
同時にこうした仕組みの実現に向けた8つの問題点と4つの戦略、9つのデータスペースを挙げている。9つのデータスペースとして具体的に挙げられていたのは以下の9つである。
今後はこれらの領域でのデータ共有基盤の構築や展開の強化が想定される。
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