工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第11回は、無駄を減らし生産プロセスを最適化することが可能な「工程仕掛かり分析」と「製品在庫分析」について説明します。
「最適在庫量」という言葉をよく耳にします。しかし、そもそも工程仕掛かり量や製品在庫量に“最適”というものがあるのでしょうか。これらには全て生産経費がかかっているわけで、仕掛かりや在庫の状態にある以上、生産における無駄と認識されるべきです。つまり、これらは全て損費になるので、理想的な最適在庫量はゼロが正しいのではないでしょうか。
今まで最適という言葉に惑わされて現状を是認し、振り回されていたことになります。このような旧態依然とした現状からの脱却に挑戦してみませんか。その材料となるのが、今回紹介する「工程仕掛かり分析」と「製品在庫分析」です。
工程仕掛かり分析は、生産工程の進行状況を評価して生産効率や品質の向上などを目指すための分析手法です。この分析により、生産工程のどこで遅延が発生しているか、どの部分で改善が必要かを明らかにします。具体的には作業の進捗状況を監視し、予期しない遅延や問題を早期に発見することで対策を講じられます。
工程仕掛かり分析により、生産全般の効率化やコスト削減、品質向上などを図ることができます。さらに、この分析を通じて、生産工程の途中で発生するコスト高の要因や資源の使用状況を評価して管理することにより、部品や半完成品、製品が製造される過程で発生する無駄を減らし生産プロセスを最適化できます。
工程仕掛かり分析は、生産工程内にある原材料や部品、製品が、どこの工程にどのような理由でどの位の数量が滞留しているのか、それらの物の表示や記録、保管の状況や運搬がどのような状態になっているのかなどについて動態分析を行う手法です。分析結果は、仕掛かりの数量の削減、リードタイムの短縮、レイアウトの改善、工数の低減、品質の向上、原価の低減などに役立てます。
分析を行おうとする工程仕掛かりには、“工程内仕掛かり”と“工程間仕掛かり”があります。工程内仕掛かりでは、工程内で作業中の物と作業待ちの物があります。また、工程間仕掛かりは、前工程の作業が完了し、次の工程を待っている工程間に仕掛かっている物をいいます。
工程仕掛かり分析は、この工程内仕掛かりと工程間仕掛かりを分析の対象範囲とします。主な分析のポイントは以下の通りです。この分析を定期的に行うことで、生産管理の改善や原価低減を進め、利益の増額を図ることができます。具体的には、主として、以下の項目の改善に効果的です。
工程内仕掛かり品と工程間仕掛かり品について、仕掛かり原因別の仕掛かり数量を調べて把握します。工程内仕掛かりと工程間仕掛かりの仕掛かり原因としては、以下の内容が考えられます。
仕掛かり品が置かれている物に対する表示や記録、保管状況や運搬などの状態を調査して分析を行います。
いわゆる改善サイクルの“Plan→Do→Check→Action(PDCA)”に沿って、仕掛かり品の削減計画が立案され改善が進められているかを評価します。“Plan”では、改善目的と改善目標値、目標値を達成するための改善方法を決めます。それらの推進状況の評価分析を行います。
全ての改善項目が実施されているにもかかわらず、目標値が達成されていなければ、追加の改善項目を検討しなければなりません。
工程仕掛かり分析は、以下の手順で行います。また、特定の工程のみを分析対象にするのではなく、必ず初工程から最終工程までを対象にして分析することが全体最適の生産方式の構築につながります。
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