大正14年から続く三菱電機技報が100周年、その創刊当初にはどんな技術が登場?製造マネジメントニュース

三菱電機の技術を伝える技術広報誌「三菱電機技報」が2025年に100周年を迎えた。それに伴い、三菱電機では創刊号をはじめとする一部の冊子を報道陣に公開した。

» 2025年12月24日 06時45分 公開
[坪田澪樹MONOist]

 三菱電機は2025年12月16日、東京都内で合同取材に応じ、2025年で100周年を迎える同社の技術広報紙「三菱電機技報(以下、技報)」に関する歴史と、創刊号をはじめとする一部の冊子を報道陣に公開した。

 三菱電機技報は三菱電機グループのさまざまな技術分野に関する最新技術を論文形式で紹介しており、1925年(大正14年)に第1号を創刊して以降、現在まで発行を続けている冊子である。三菱電機は1921年(大正10年)に三菱造船 電機製作所を母体に創業したが、創業4年目から発行し続けていることになる。2023年の3月からは技報の発行を紙の冊子からWeb掲載に移行し、100周年を迎えた現在では創刊から最新号までのバックナンバーを公開している。

 会場では創刊から10数年分の技報を持ち込み、披露した。技報の中には電気機関車や発電機、家電といった当時の三菱電機グループが取り組んでいた技術に関する情報が多く掲載されていた。例えば、記念すべき創刊号にはタービン発電機や電気アイロンなどの技術情報が掲載されていた。創刊から100年の時が経過した現在でも、文字や写真がかすれることがなくはっきりと視認できる。

技報を発行した年に三菱電機が改良した送風機器の特集ページ[クリックして拡大]
長崎で完成したターボ発電機(左)と空気制御式戸閉装置に関する説明(右)[クリックして拡大]

 三菱電機 生産システム企画・技術部長の吉川文敏氏は「創刊して100年たった現在でも続いている技術がある。例えば鉄道用の電気設備や冷蔵庫、エレベーターといった技術は今でも進化を続けている。技報を残していくことにより、現在の開発者や過去の歴史、進歩の過程が次の新たな開発に向けた基盤になると考えている」と語る。

 ちなみに、1925年の創刊から1928年頃までの技報には、表紙にイラストが掲載されていた。特に創刊から1926年頃までは、技報の表紙に謎の人物がずっと描かれているのだが、どういう人物でどういう狙いで描かれているのかは三菱電機内で詳細を調べても正確なことが何も分からなかったという。

創刊号の技報表紙(左)と2023年発行の技報表紙[クリックして拡大]

 技報では、国内初/世界初といった過去のさまざまな技術革新が掲載されている。創刊当時は発電機やモーターなどに関するものが多かったが、徐々に家電などの民生製品に関するものも増えた。最近の例では、2024年5月にパズルキューブを最速で解くロボットが0.305秒という記録を出してギネス記録認定(当時)されているが、このロボットの技術概要を特集論文として公開している。このような直接的な製品ではない技術も公開して、産業の発展や社会貢献という創刊以来の理念を守り、現在も情報発信を続けている。

 三菱電機技報は、同社のモノづくりに関する技術本部である生産システム企画・技術部の“部長の役職”に就いている人が代々編集委員長を務めているという。現編集委員長でもある吉川氏は「本部の名前が変わることがあっても、われわれの部署が事務局として技報の製作委員をまとめている。三菱電機ではそれぞれの事業本部が非常に強いため、それらを横断的にまとめる組織としてわれわれの部署がある。技報についても時代に合わせて使い方が変わっていくと思うので、そういうところも踏まえて良いものを発信していきたい」と述べている。

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