次は、アドバンストクラスの結果である。アドバンストクラスの課題は、2019年から3年連続でブロックをマス内に並べる「ブロックビンゴ」が続いていたが、今回は新たに「ブロックdeお片付け」が導入された。
ブロックはまず、3×3のマス内の中央以外に配置(4色×2個の計8個)されている。その周囲4カ所には、ブロックベースエリアがあり、マス内のブロックをこの中に移動させるのが基本となる。このとき、ブロックベースエリアと同じ色なら2秒/個、違う色なら0.5秒/個と、ボーナスタイムが4倍も違うので、高得点を狙うには、なるべく色を一致させる必要がある。
さらに、少し離れたところにもう1個ブロックが置かれていて、それを同色のブロックベースエリアに移動できれば、ダブルアップボーナスが成立。そのエリア内で色が一致しているブロックのボーナスタイムを2倍にすることができる。
各ブロックの初期配置は決まっており、色については、走行前にランダムで決定される。効率の良い運搬順序を決めるには、各色の配置を知る必要があるが、そのためにコース上に無線通信のカメラシステムを置くことが許可されており、その画像認識によって、ロボットはエリアの様子を知ることができる。
カメラシステムの利用方法が面白かったのは「チームうどん」のロボット。前後にARマーカーを搭載しており、カメラシステムからの映像を位置情報の補正に使っていたという。ただ、その位置補正がうまくいってなかったのか、運んだブロックの位置が少しズレていたりして、ボーナスタイムの獲得は4.0秒にとどまっていた。
各チームとも苦労していたが、出場した10チームの中でも、最も多くのボーナスタイムを獲得できたのは、競技1位の「Smart Reborns」チーム。それでも、色一致のブロック移動は4個のみだったのだが、初めての競技としてはまずまずの結果だったといえるのではないだろうか。
今回は前述のように、新旧2種類のロボットが使えるのだが、新型機への移行はリスクもあり、従来のHackEVで出場するチームが目立った。そんな中、新型のHackSPiで競技の3位に入った「HELIOS」はお見事。色は不一致だったものの、7個のブロックの移動に成功したのは同チームだけで、見せ場を作った。
なお、走行コースについては、前回よりもさらにシンプルになった。たった2回曲がるだけでゴールするという非常に簡単なレイアウトで、出場者はそれだけ、ブロックdeお片付けの方に開発リソースを集中できるというわけだ。ただ、それにもかかわらず完走率が3分の2ほどだったというのは、ちょっと物足りなく残念だった。
一方、モデル部門では、「累とゆかいな仲間たち」が高い評価を受けた。残念ながら、競技ではブロックを1個も移動できなかったのだが、総合順位では逆転で優勝。このチームは専門学校ということで、プライマリークラスと同じように、企業チームを抑えての優勝となった。
今回、3年ぶりのリアル開催となったわけだが、筆者が見ていて気になったのは、完走率の低さだ。地区予選ならまだしも、全国から選抜された優秀なチームが出場するチャンピオンシップ大会としては、正直物足りない。ライントレースは制御の基本であり、せめて完走することが結果としての最低ラインだろう。
ETロボコン実行委員長の星光行氏は、総評で「チャンピオンシップ大会らしい走りを期待していたが、とても残念な結果だった」とコメントした。
苦戦の原因として、推測されるのは環境の変化だ。従来の会議センターは照明が蛍光灯だったが、展示ホールはLEDだったという。ライントレースに使うカラーセンサーは環境光の影響を大きく受けるため、この照明の変更については事前にアナウンスしていたそうだが、「もっとLED照明について研究してもよかったのでは」と苦言を呈した。
また無線のトラブルもロボット競技会ではよくあることだが、これについても、「スタートできないチームが幾つかあったのはショックだった」(星氏)と指摘。「フェイルセーフは絶対に必要。もしつながらなければボタンでスタートできるようにしておくとか、そうしなければ組み込み製品なんて作れない」(同氏)と、アドバイスを送った。
久し振りのリアル開催。会場は変更。ロボットは新型が登場。競技も初めての内容と、確かに不利な条件は多かったものの、チャンピオンシップ大会であればこそ、何とかしてほしかったところ。ただ、次回はもう慣れてきているだろうから、アドバンストクラスでのパーフェクト達成をぜひ期待したい。
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