2017年のETロボコンでは、新競技となる「ガレッジニア部門」が開催された。デベロッパー部門のアドバンストクラスも、後半のゲーム競技の難易度が上がり、新ボーナス「韋駄天」が追加されるなど大きな変更が行われた。本稿では、ガレッジニア部門とアドバンストクラスを中心に、各チームの奮戦を動画とともに紹介する。
若手エンジニアの育成を目的としたロボット競技会「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト2017(ETロボコン2017)」の全国大会(チャンピオンシップ大会)が2017年11月15日、パシフィコ横浜で開催された。16回目となる今大会では、「ガレッジニア部門」が新設。まずは、この新競技の内容からお伝えしよう。
「ガレッジニア部門」は、2016年まで開催されていた「イノベーター部門」を引き継ぐ形でスタートした新部門である。「ガレッジニア」というのは聞き慣れない単語だが、これは「ガレージ」と「エンジニア」を組み合わせた造語。起業前にガレージでモノ作りを開始したエンジニア――イメージはそんなところだ。
従来のイノベーター部門は、エンジニアにも企画力が必要という意図のもと、2013年に始まったものの、出場者が激減。「時間や手間がかかりすぎる」という理由が多かったことから、競技内容を一新した。
従来同様、何をやるかは出場者の自由であるが、ガレッジニア部門では、技術をベースにしたワクワク感を重視する。ビジネス的な視点や、システムとしての完成度は無くてもいい。イノベーター部門も当初はそんな感じだったのだが、徐々に問題解決型のシステムばかりになってしまったので、意図を明確にして、出直したといえる。
ルールは最低限に抑えた。アクチュエータとセンサーをそれぞれ1つ以上使い、10万円以内で作れれば良い。10月上旬からYouTube上でビデオ審査が行われ、全国大会には、その上位5チームが出場、8分間のプレゼンテーションを行った。なお順位は当日の審査結果だけで決められ、ビデオ審査の得点は一切考慮しない。
ガレッジニア部門の初代優勝者となったのは「追跡線隊HiICSイエロー」(日立産業制御ソリューションズ)チーム。このチームが開発したのは、スーツケースやショッピングカートなどで使える追跡機能モジュールだ。
自動追従自体はアイデアとしては真新しくないものの、これはコア機能を共通化することで、さまざまなものに広く応用できるのが特徴。例えばデジカメにこの機能を追加して、自動で付いてきてくれれば、いちいち三脚を立てて自撮りしなくて良いので便利、といった使い方なども考えられるそうだ。
当日のプレゼンでは、ショッピングカートに搭載した事例を紹介。腰に巻いた3色のベルトをターゲットに、画像認識で追従する様子が披露された。企業チームらしく、手堅くプレゼンをまとめ、ビデオ審査に続き、会場審査でも1位となった。
また非常に面白いと思ったのが「Monolith G」(岩手県立大学ソフトウェア情報学部ソフトウェア情報学科)チームが開発したマイクスタンド「ミーアキャット」。式典で良く見かけるのは、話者が代わったときに横からスタッフが出てきて、マイクスタンドの高さを調整するシーンだ。これではスタッフも大変だし、進行もいったん止まってしまう。
このミーアキャットは、ボタン1つで、自動的に話者の口元の高さにマイクを合わせてくれるというもの。ETロボコンらしく、システムにはLEGOが使われており、サウンドセンサーで音量を計測して高さを検出、サーボモーターでタイヤを回してポールをその高さまで移動させている。
最近、さまざまなものがスマート化されているが、マイクスタンドに注目したのはユニーク。動きが面白くてつい笑ってしまうのだが、真面目にこういうニーズはありそうだし、アイデアとしては悪くないだろう。このチームは見事2位に入賞した。
その他のチームのプレゼンテーションは以下の通りだ。
なお、ビデオ審査のパフォーマンス動画については、コチラ(https://www.youtube.com/channel/UCxGEJI5bBpafAz9Tof89lMw/videos)で見られる。全15チームの動画が公開されているので、どんなものがあったのか参照して欲しい。
初開催の競技として、まずは盛り上がって良かったと思うが、全体的に問題解決型のテーマが多く、従来のイノベーター部門を引きずっている感じがあったのはやや残念なところ。初開催で出場者も手探りだった側面もあるのだろうが、個人的には、次回はもっと、単純に「面白いだけ」のテーマなども見てみたいと思う。
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