2022年のETロボコンは3年ぶりのリアル開催となった。新しい競技に新しいロボットも加わって気分を一新しての再スタート。しかし3年ぶりのリアル開催の大会には物足りなさが残った。
「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト(ETロボコン)」のチャンピオンシップ大会(全国大会)が2022年11月17日、パシフィコ横浜にて開催された。コロナ禍の影響により、同大会は2年連続でオンライン開催となっていたが、リアルでの開催はじつに3年ぶり。新しい競技に新しいロボットと、気分を一新しての再スタートとなった。
ETロボコンは、組み込み分野のエンジニア育成を目指し、開催されているロボット競技会である。2002年に始まった同大会は、今回が21年目。ロボットというハードウェアは使うものの、ソフトウェアの設計技術を競う大会となっており、ロボットの仕様は共通。純粋にソフトウェアの優劣のみで全てが決まるというのが大きな特徴だ。
同大会がリアル開催されるのは3年ぶりとなるが、今回は会場が変更されている。従来はパシフィコ横浜の会議センターで行われていたのに対し、今回は展示ホールに移動。展示会「EdgeTech+ 2022」の会場内で実施され、ETロボコンを知らない人でもぶらりと立ち寄って観戦しやすくなっていた。
ロボット(ETロボコンでは“走行体”と呼ぶ)については、これまで同大会ではレゴの「EV3」をベースにした2輪駆動の「HackEV」を使っていたが、生産終了で今後は入手が困難になってくるため、新たに「SPIKE」をベースにした「HackSPi」を用意。今回は移行期間として、例外的にこれら2種類のロボットの使用が認められている。
両ロボットの機能はほぼ同等。新しいHackSPiにも、ブロックを移動させるアーム、前方の障害物を検出する超音波センサー、コース表面の色を調べるカラーセンサーなどが用意され、HackEVと同じことができるようになっている。
ただ、SPIKEはEV3に比べ、計算機としての性能が大きく劣るため、HackSPiでは補足的に「Raspberry Pi 4」と組み合わせて利用することが可能となっている。これにより、SPIKEにはハードウェア周りの制御のみを任せ、高度なアルゴリズムはRaspberry Pi 4側に実装する、という役割分担ができるというわけだ。
ETロボコンには、3つのクラスが用意されている。入門者向けのエントリークラス、初級者向けのプライマリークラス、応用向けのアドバンストクラスがあり、参加者のレベルに合わせ、選ぶことが可能だ。チャンピオンシップ大会では、これらのうち、エントリークラス以外の2クラスが行われる。
競技の基本となるのは、コース上の黒線に沿って走行するライントレースだ。ゴールまで到着すると、まずこれで走行タイムが確定。その後、クラスごとに異なる課題に取り組み、その結果によってボーナスタイムを得ることができる。走行タイムからボーナスタイムを差し引いたものがリザルトタイムとなり、これで競技の結果が決まる。
コースはL/Rの2種類があり、それぞれ1回ずつ走行することができる。L/Rはコース外に置かれた障害物の配置が異なるものの、基本的には左右対称のレイアウト。2回走行した結果の良い方が採用されるベストスコア方式なので、一方で手堅く走行し、もう一方でチャレンジングに攻める、といった戦略も可能だ。
しかし競技の結果だけで全てが決まらないのも、ETロボコンのユニークな点といえる。同大会では、ソフトウェアの設計図であるモデルの評価も重視。アドバンストクラスにおいては、競技結果とモデル評価によって総合順位が決まり、たまたま競技がうまくいっても、それだけでは総合優勝できないように考えられている。
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