車載インフォテインメントシステムとは?IVIシステムの標準化を目指す「GENIVI」【前編】(1/2 ページ)

IVIシステムの概要と、GENIVI Allianceが開発した「GENIVIプラットフォーム」を紹介。今回はIVIの概要を中心に解説する

» 2011年02月14日 00時00分 公開
[K.I.マヘーシ,@IT MONOist]

IVIシステムとは?

 「IVI(In-Vehicle Infotainment:車載インフォテインメント)」システムをご存じだろうか?

 “インフォテインメント”とあるとおり、IVIシステムは自動車に「インフォメーション(情報)」と「エンターテインメント(娯楽)」の機能を幅広く提供するものです。具体的には、ナビゲーション、位置情報サービス、音声通信、インターネット接続のほか、音楽や動画などのマルチメディア再生、ニュース、電子メールなどへのアクセス・検索機能などを指します。

 また、従来のカーナビゲーションシステムやカーオーディオなどとは異なり、IVIシステムの利用範囲は、車内だけにとどまらず、車内と家庭/オフィスといった車外環境とのシームレスな接続や、ほかの外部機器との連携といった、統合運用・利用が想定されています。

 すでに、IVIシステムは急速に変化・拡張している分野の1つであり、現在、自動車メーカー各社は、IVIシステムの早期開発・市場投入を目指して日々邁進(まいしん)している状況です。

 本特集では前・後編の2回で、IVIシステムの概要・基礎知識と、IVIシステム向けにオープンなインフォテインメントプラットフォームの幅広い採用を目指し発足された非営利団体「GENIVI Alliance」と、同団体が開発した「GENIVIプラットフォーム」について紹介します。なお、今回は前編として、IVIシステムの概要・基礎知識を取り上げていきます。

関連リンク:
GENIVI Alliance

IVIシステムの仕組み

 はじめに、IVIシステムの仕組みについて簡単にご紹介します。図1は、一般的なIVIシステムの仕組みに関する概略図です。IVIシステムは主に、「統合ユーザーインターフェイス」「電子機器の接続」「ネットワークの接続」「コンテンツ管理」「分散オーディオ管理」といった役割を担っています。

IVIシステムの概略図 図1 IVIシステムの概略図

 そして、IVIシステムに対する入出力についてですが、ご覧のとおり、IVIシステムへの入力データには、車両データバス経由でIVIシステムへと取り込まれるマイク、ノブ、ボタン、スイッチ、周辺ビューカメラ、センサなどの入力デバイスからの情報。3G/4G、WiMAX、Sat通信を介して、IVIシステムに入力されるインターネットサービス(IP TV、IP RADIO、VODストリーミングコンテンツなど)からの情報。さらに、USB、Bluetooth、Wi-Fi、UWBを介してIVIシステムに接続される携帯電話、PDA、MP3プレーヤー、カメラ、ゲーム機などの電子機器からの情報があります。

 こうした入力データは、IVIシステム内で処理され、例えばSD/HDビデオやHDオーディオとして、ヘッドユニットやRSE(リアシートインフォテインメント)、アンプ、スピーカー、ヘッドフォンなどから出力されます。

IVIに求められるHMIとは?

 IVIに求められる機能は、「モバイルデバイスとの接続機能」や「インターネットラジオ機能」など当然顧客からのニーズも重要な要素ですが、何よりもドライバーの安全に配慮した素早い認知・判断・操作を実現・手助けする「HMI(Human-Machine Interfaces:ヒューマンマシンインターフェイス)」が重要な役割を果たします。

 以下に、IVIシステムに求められる主なHMIについて紹介します。

[1]音声認識

 音声認識は、HMIの中でも最も重要な機能として挙げられます。音声認識技術により、ドライバーが直接タッチしたりボタンを押すことなく、そして、たくさん画面を遷移させることなく、音声だけで簡潔に機器操作を可能にします。また、文脈上の文法の認識だけでなく、グローバルな方言を認識する技術も必要とされます。この機能の実現により、現在、主に使用されているような扱いにくい音声コマンドメニューも使わずに済みますし、方言のサポートが改良されることで、音声命令の複数回の入力・繰り返し入力の必要性が軽減されます。

[2]タッチパネル

 最近話題のスマートフォンなどでも積極的に採用されていることからお分かりのとおり、タッチパネルを採用することで、ユーザーは直感的かつ簡単に、素早く機器を操作することができます。また、ナビゲーション以外にもタッチパネル対応のさまざまなアプリケーションの使用が可能になります。

[3]3Dグラフィックス

 3Dグラフィックスは、主に3Dナビゲーションなどに使われ、より立体的で実際のイメージに近い視認性をユーザーに提供するほか、リッチなユーザーインターフェイスの実現を可能にします。

[4]ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)

 HUDを用いドライバーの通常の視界に、ドライビング情報などを重ね合わせたバーチャルイメージを表示させます。いわゆる拡張現実(AR:Augmented Reality)です。一般的に、フロントガラス映像よりもHUDの方がより安全なドライビング環境を提供できるとされています。ちなみに、HUDの視野角が20度以上あると、ドライバーにとって最適・安全だといわれています。

[5]ジェスチャ認識

 身振り手振りでIVIシステムを操作する機能です。従来、ヘッドユニットの操作は、ドライバーがヘッドユニットに直接触れる必要がありましたが、ジェスチャ認識では、ヘッドユニットに触れることなく身振り手振りだけで機器を操作できるようになります。

[6]ハンドル制御

 ハンドル制御機能は、各IVIシステムを識別する重要な特徴として位置付けられています。ハンドルに搭載された制御ボタンからIVIシステムの操作が可能になります。また、ほかの外部機器(スマートフォンなど)がIVIシステムに接続されている場合も同様に、ハンドルにある制御ボタンからそれらを操作することができます。

[7]テキスト読み上げ(Text to Speech)

 こちらは、主にハイエンド自動車の標準機能として求められています。例えば、従来のナビゲーションでは「500メートル先を右に曲がってください」というような指示が出されますが、テキスト読み上げ機能が搭載されている場合は、地図上に表示されている道路名などをテキストとして取り込み、読み上げることで「500メートル先にある“○○街道”を右に曲がってください」というふうにより具体的な指示が可能となります。また、メール受信したテキストメッセージの読み上げもできます。

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