東京大学医学部附属病院は、小児腎臓病患者の尿中にある細胞外小胞(uEVs)の変化が、慢性的な腎機能の低下に関連することを発見した。また、uEVsをバイオマーカーとした尿検査法が、小児の腎機能低下の診断に有用であることを確認した。
東京大学医学部附属病院は2022年11月9日、小児腎臓病患者の尿中にある細胞外小胞(uEVs)の変化が、慢性的な腎機能の低下に関連することを発見したと発表した。また、uEVsをバイオマーカーとした尿検査法が、小児の腎機能低下の診断に有用であることを確認した。がんプレシジョン医療研究センターとの共同研究による成果だ。
今回の研究では、さまざまな臓器や細胞から放出される細胞外小胞の中で、尿中に含まれるuEVsに着目。小児腎臓病患者と健常児のuEVsについて、粒子の形状やタンパク質の発現パターンなどを比較した。
その結果、腎機能が低下した患者では、uEVsの大きさが変化していた。また、先天的に腎臓のネフロン数が減少している患者では、タンパク質の発現パターンに特徴的な変化があった。このことから、発現パターンの変化を利用することで、尿から腎機能の低下を検出できる可能性が示唆された。
これらの結果を応用し、uEVsの特徴的な変化の中から、複数分子の発現量を簡易的に測定するシステム「尿検査法プロトタイプ」を作成。これを用いて検査したところ、小児の腎機能低下を早期に検出できることが確認できた。
尿検査による腎臓病の検査では、小児や若年成人の慢性腎臓病など、一部の疾患は異常を捉えるのが難しい。uEVsを用いる検査は、採血を必要とせずに、従来は検出できなかった腎組織の変化を直接捉えることができる。さらに、抗体検査などで利用されるELISA法を使い、uEVsのバイオマーカーを定量化できることを確認した。
今後、uEVsを用いた検査法を確立することで、小児の腎臓病の早期診断と治療開始、予後の改善につながるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.