理化学研究所は、新型コロナウイルス由来のウイルスRNAを1分子レベルで迅速に識別する「opn-SATORI装置」を改良して、安価で小型のウイルスRNA検出装置「COWFISH」を開発した。
理化学研究所は2022年10月27日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)由来のウイルスRNAを1分子レベルで迅速に識別する、安価で小型の検出装置「Compact Wide-field Femtoliter-chamber Imaging System for High-speed digital bioanalysis(COWFISH)」を開発したと発表した。60万個の微小試験管の蛍光画像を1回で撮像して迅速に検出する。東京大学、京都大学、東京医科歯科大学との共同研究による成果だ。
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COWFISHは、2022年度に共同研究グループが開発したSARS-CoV-2全自動検出装置「opn-SATORI装置」の検出部を大幅に改良し、小型化、低コスト化した。opn-SATORI装置と同様に、ウイルスRNAを1個ずつ識別し、検体中の個数を計測できる。
検出部を、opn-SATORI装置で用いた共焦点顕微鏡から市販の一眼レフカメラとテレセントリックレンズに変更することで、設置面積比で約5分の1まで小型化し、卓上利用が可能となった。構成部品の総額は120万円以下と、約30分の1まで削減した。
この検出部の改良により、大面積の視野を高解像度で撮像するとともに、マイクロチップの撮像時間の短縮にも成功。1回の撮像時間は約10秒で、最短3分で検出できる。
COWFISHの検出感度は、opn-SATORI装置、PCR検査法と同等だ。また、臨床検体を用いた陽性判定では、正解率が95%だった。
opn-SATORI装置は、RNA切断酵素と微小試験管を集積したマイクロチップを利用し、SARS-CoV-2由来のウイルスRNAを1分子レベルで検出する全自動装置だ。しかし、大型、高価のため、導入できる施設が限られるという問題があった。
小型、低コストのCOWFISHの開発により、大規模検査センターだけでなく、POCT(臨床現場即時検査)への活用も期待できる。新型コロナウイルス感染症の他にも、さまざまな感染症の診断にも活用可能だ。
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