半導体デバイスの模倣品対策にブロックチェーンを利用する理由について角淵氏は「一般的なブロックチェーンのメリットが発揮できると考えた。データの改ざん修正を行うことができない点がある他、デバイスサプライチェーンでは世界中の多様な関係者が関わるため、世界中の多くのメンバーが参加しやすい仕組みであることがポイントとしてある。また、システムがダウンしにくく、自律分散型の仕組みであるためランニングコストが安いというメリットがある」と利点について述べている。
ブロックチェーンによるサプライチェーントレーサビリティシステムを構築できれば、デバイスの使用履歴をブロックチェーンで管理できるため、使用済み半導体デバイスの再利用を防ぐことができるようになる。また、デバイスメーカーの品質証明や製造出荷履歴などの情報を合わせて確認できるようになることで、サプライチェーンの途中で不正に入り込むデバイスを発見し、排除することも可能となる。
また、従来のデバイス追跡の仕組みでは、各企業間での問い合わせを重ねるバケツリレーで情報把握に努めるしかなかったが、ブロックチェーンによる仕組みが構築できれば、デバイスメーカーが書き込んだ製品情報を迅速に確認できるようになる。さらに、企業ネットワークを超えたサプライチェーンネットワーク情報網が構築可能となる。
現在、このブロックチェーン技術による半導体サプライチェーンの管理規格について策定を進めている最中で、今後1〜2年以内の規格成立を目指しているという。角淵氏は「SEMIスタンダードでは従来工場内の規格化を中心としてきたが、今回のサプライチェーンの規格については工場外の関係者が多く、合意形成に時間が必要になっている。ただ、現在の環境を考えてもできるだけ早期の規格化を目指したい。できれば1年、遅くても2年くらいの範囲での規格化を行う」と角淵氏は語っている。
規格が成立した後、これらの技術が実際に使われるようになるための仕組みについては「SEMIスタンダードとしては規格化までの役割で実際の仕組みなどは事業としての各企業の考えで取り組むものという立場だ。ただ、個人的な考えでは、コンソーシアムのような形を作り、関係者が参加することでそのサプライチェーンに関わる半導体デバイスのトレーサビリティーが確保されるような仕組みとして展開されていくのではないか」と角淵氏は考えを述べている。
またSEMIジャパン 代表取締役の浜島雅彦氏は「運用していくのはコンソーシアムのような組織が必要だが、世界中で活用される仕組みとなるにはもう少し時間が必要だと見ている。将来的には、全ての半導体デバイスの管理が同じブロックチェーンの仕組みによって運用されるようになることが理想だ」と語っている。
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