製造業にも役立つブロックチェーンの3つの特徴製造業ブロックチェーン活用入門(前編)(1/3 ページ)

「インターネット以来の発明」と言われ、高い期待が寄せられているブロックチェーン。本稿では、製造業向けにブロックチェーン技術や適用範囲、さらに活用メリットを前後編に分けて解説する。前編ではまず、ブロックチェーンの技術的な仕組みについて取り上げてみよう。

» 2019年02月27日 10時00分 公開

 「インターネット以来の発明」と言われ、高い期待が寄せられているブロックチェーン。市場調査会社であるIDCが2018年9月に公開した市場予測によると、2018年におけるブロックチェーンへの支出額は、前年比約2倍の15億米ドル(約1650億円)と予想されている。このうち、製造・資源分野の同年の支出予想額は3億3400万米ドル(約370億円)で、組立製造やプロセス製造が投資をけん引すると見られている。

 とはいえ、ブロックチェーンの業務への導入には課題も多い。その1つとして、決定権を持つ多くの経営層がブロックチェーン技術を理解していないことが挙げられる。最先端技術で活用事例が少ないがゆえに「様子見」になっているのだ。日本の主力産業である製造業の場合、先進的なIT技術に対しては特にこの傾向が強い。

 しかし、今でこそ製造業での活用が注目を集めているIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)と同じように、ブロックチェーンについても「様子見」ばかりしているわけにはいかないはずだ。全般的に国際競争力の低下が指摘されている日本においては、ブロックチェーンの可能性を正しく把握し、どのように自社のビジネスに適用させていくかを考える必要がある。

 そこで本稿では、製造業向けにブロックチェーン技術や適用範囲、さらに活用メリットを前後編に分けて解説する。今回の前編ではまず、ブロックチェーンの技術的な仕組みについて取り上げてみよう。

そもそもブロックチェーンとは何か

 最初に「ブロックチェーンとは何か」「どのような技術なのか」を押さえておこう。

 ブロックチェーンとは、ネットワーク内で発生した取引記録を1つの塊(ブロック)とし、時系列順でチェーンのようにつなぐ技術を指す。一定時間ごとに取引情報を暗号化してブロック(N)にする際、その情報を含んだハッシュ値を次のブロック(N+1)に格納する。

なぜ「ブロックチェーン」なのか なぜ「ブロックチェーン」なのか(クリックで拡大)

 もともとブロックチェーンは、仮想通貨(暗号資産)「ビットコイン」の基盤技術として考案され、発展してきた技術だ。送金などの取引情報を集めたブロックを複数のコンピュータ(ノード)間で保持することで、改ざんを難しくする。参加者が対等に相互監視や協力をしながら、信頼性を維持している。日本語でブロックチェーンが「分散型台帳技術」と呼ばれるのは、そのためだ。

 ブロックチェーンの特徴は、「トレーサビリティー」「耐改ざん性」「透明性」の3つに大別される。まずトレーサビリティーについては、全ての取引データがブロックとして格納されているので、その内容を過去にさかのぼって確認できることによる。ある時点のブロック内データの改ざんを試みると、後続の全ブロックを修正しないと成立しないため、耐改ざん性も確保できる。そして、ブロックチェーンネットワークの参加者全員で同じデータを同期・共有しているため、「誰と誰がどのようなやりとりをしているのか」を隠すことはできないという透明性につなげられるわけだ。

ブロックチェーンの3つの特徴 ブロックチェーンの3つの特徴(クリックで拡大)

 加えて、一部の参加者(ノード)がダウンしても、他の参加者が活動していれば、処理が実行される「無停止性」も特徴の1つだ。中央集権的な大規模サーバを必要とせず、同じデータを複数で保持しながら管理する特徴から「低コストで運用可能」であることもメリットだと言ってよいだろう。

 こうした特性からブロックチェーンは、暗号資産などの金融分野だけでなく、SCM(サプライチェーンマネジメント)やスマートグリッド、IoT、シェアリングサービスといった領域にも適用できると期待されている。

 さて、一言で「ブロックチェーン」と言っても、その種類は1つではない。ブロックチェーンには、参加者を制限しない「パブリック型」と、複数の組織で構成する「コンソーシアム型」「プライベート型」がある。

ブロックチェーンの種類 ブロックチェーンの種類

 パブリック型には基本的に運用の管理主体が存在しない。誰でも自由にアクセスし、全員でシステムを維持する仕組みだ。公共性が高い一方で、一度に処理できる量は限定される。パブリック型を採用しているのは、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産である。なお、同じ暗号資産でも、三菱UFJ銀行が運用するMUFGコインは、プライベート型を採用している。

 一方、エンタープライズ市場では、限定的な組織が複数参加する「コンソーシアム型」や、単一の組織で構成される「プライベート型」が利用されている。こちらは参加が許可制で、データの閲覧にも制限がある。特定のサプライチェーンや、グループ会社内での利用が主だろう。利用例としては、土地登記や、シェアリングサービスが想定される。

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