製造業にも役立つブロックチェーンの3つの特徴製造業ブロックチェーン活用入門(前編)(2/3 ページ)

» 2019年02月27日 10時00分 公開

異なる企業間でのデータ連携で力を発揮

 では実際に企業がブロックチェーンを導入する際には、どのような準備が必要なのか。既存技術とブロックチェーンの違いを見ながら考えてみたい。

 ブロックチェーンで実現するのは、異なる企業が持つデータの連携である。既存システムでこれを実現するには、それぞれのシステムが外部から呼び出せるインタフェース(IF)を用意したり、API(Application Programming Interface)を公開したりする必要がある。

APIなどを用いる既存のシステム間連携のイメージ APIなどを用いる既存のシステム間連携のイメージ(クリックで拡大)

 こうした方法でデータを連携するには多くの課題があった。その1つが異なるシステム間のデータ整合性だ。APIなどを用いたオンライン連携の場合には、システムを構築するにもかなりのコストがかかる。また、仕様の解釈が関係者で異なると、正しく連携が行えない。データが正しく格納されずに読み込めない、不正データが通知されるといったトラブルが発生する。さらに、送受信者間でしかデータがやりとりされないため、検証可能なデータの範囲が狭く、第三者のデータは参照不可だった。

 もう1つの大きな課題は、データ連携にかかわるコストと運用管理の手間である。複数の企業と組織間で共通システムを所有するにしても、「誰が運用と保守を担当するのか」「どのように運用費用を分担するのか」という問題が発生する。さらに、障害ポイントによってはシステム全体が停止してしまうという課題もあった。

 一方、ブロックチェーンによるシステム間連携では、データの同期は自動的に実施され、参加者全員が最新情報を保持する仕組みを採用している。データの取引はブロックチェーンネットワーク上で実施されるので、API連携をする必要がなく、企業はブロックチェーン上に公開する自社のデータだけを管理していればよい。

 ブロックチェーンの基本的なシステム構成は、以下の図のようになる。

ブロックチェーンによるシステム間連携のイメージ ブロックチェーンによるシステム間連携のイメージ(クリックで拡大)

 企業は、ブロックチェーン上に公開する(他システムと共有する)データを判断してアクセスライブラリ(データベース)を作成する。次に、参加するブロックチェーンに合わせて「スマートコントラクト」を開発し、データとともに公開する。

 スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で契約行動をプログラム化し、自動的に実行する仕組みだ。特定条件や履行、成果を明文化して事前定義し、条件を満たした場合にのみプログラムを自動実行する。「取引」と「契約」を自動化する仕組みと考えてよい。これが、先述したブロックに格納される。

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