日立子会社の日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)とジョンソン・コントロールズ・インターナショナル(JCI)は、両社が共同出資で設立した空調事業の合弁会社であるジョンソンコントロールズ日立空調の全株式をボッシュに譲渡する。
日立製作所(以下、日立)と子会社の日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立GLS)は2024年7月23日、日立GLSとジョンソン・コントロールズ・インターナショナル(Johnson Controls International、以下JCI)が共同出資で設立した空調事業の合弁会社のジョンソンコントロールズ日立空調(以下、JCH)について、日立GLSとJCIが所有する全株式をボッシュ(Robert Bosch)に譲渡する契約を締結したと発表した。株式譲渡は、各国規制当局の認可を経て2025年4〜6月(2026年3月期第1四半期)までに完了する予定だ。
今回のボッシュによるJCHの買収の中で、業務用空調機器の開発/製造拠点である清水事業所(静岡市清水区)は日立GLSが取得することになる。JCHから日立GLSに清水事業所を移管した後、日立GLSとJCIがJCHの全株式をボッシュに譲渡するというプロセスになる。なお、日立GLSは清水事業所の取得によって、日本国内の業務用空調事業について開発/製造から販売/保守まで一体化して運営していく方針である。
清水事業所を日立GLSに移管した後の新会社は、日立GLSとブランドライセンス契約を締結し、従来と同様に日立ブランドの空調機器をグローバルに提供する。日本国内向けの家庭用ルームエアコンについては、新会社が引き続き日立ブランドの製品を供給し、日立GLSと連携して販売する。
なお、ボッシュはJCHとともに、JCIが手掛ける民生用と小型業務用(R&LC)の空調事業を買収する。ボッシュによるJCHを含めたJCIのR&LC空調事業の買収金額は81億米ドル(約1兆2630億円)で、このうちJCIが67億米ドル(約1兆450億円)を、日立GLSが14億米ドル(約2180億円)を取得することになる。JCIの67億米ドルの内訳は、北米事業が約46億米ドル、JCHの持ち分(出資比率60%)が21億米ドルとなる。ボッシュは、日立ブランドだけでなく、JCIが展開してきたYork、Coleman、Champion、Luxaire、Guardian、Evcon、TempMasteなどのブランドで製品をグローバルに提供していくことになる。
ボッシュの空調事業は今回の買収によって、売上高が約50億ユーロ(約8480億円)から約90億ユーロ(約1兆5260億円)に拡大する見込みだ。従業員数は1万4600人から2万6000人、エンジニアリング拠点は14カ所から26カ所、製造拠点は17カ所から33カ所となり、事業規模がほぼ倍増することになる。なお、ボッシュの空調事業は欧州を中心に展開していたため、今回の買収でJCIの北米市場、JCHの日本を含めたアジア市場が補完される形となる。
日立GLSはボッシュの100%子会社となる新会社に日立ブランドを提供するとともに、清水事業所を通してこれまでのJCHの体制と同様に、世界各地の新会社の開発/製造拠点をサポートする。これに加えて、ボッシュが持ち欧州でのフットプリントを活用して、日立ブランドの空調機器のグローバル展開を強化する。
また、清水事業所の日立GLSへの移管により、日本国内の業務用空調事業を開発/製造から販売/保守まで一体化して運営できるようになる。日立のコネクティブインダストリーズセクターの下で、日立GLSの業務用空調機器と日立グループのIT、OT、プロダクトを掛け合わせた冷熱ソリューションを一貫し提供できる体制の構築にもつながる。
これらの冷熱ソリューションは、生成AI(人工知能)需要で拡大するデータセンターや、電力消費の抑制が可能なグリーンビルディングといって成長分野への展開が可能だ。日立は、冷熱ソリューションの事業展開を、ボッシュとのグローバルでの協創を含めて加速させたい考え。日立 執行役副社長 コネクティブインダストリーズ事業統括本部長の阿部淳氏は「あらゆる産業分野でHeating&Coolingに対する需要が高まっており、空調事業は日立グループにとって戦略的に重要な位置付けにある。今後はボッシュが有する豊富なフットプリントを生かして、日立ブランドの高効率/低環境負荷の空調機器とデジタル技術を組み合わせたLumadaソリューションをグローバルに展開していく」と述べている。
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