受け継ぐ伝統と技術、日立ジョンソンコントロールズ空調清水事業所が80周年メイドインジャパンの現場力(36)(1/2 ページ)

日立ジョンソンコントロールズ空調は清水事業所の創立80周年記念式典を開催し、同事業所内の工場を報道陣に公開した。

» 2023年01月27日 13時00分 公開
[長沢正博MONOist]

 日立ジョンソンコントロールズ空調は2023年1月23日、清水事業所(静岡県静岡市)の創立80周年記念式典を開催し、同事業所内で生産する業務用冷凍/空調機器の工場を報道陣に公開した。

かつては世界初の製品も、カーボンニュートラル実現に向けた新製品に期待

 日立ジョンソンコントロールズ空調は2015年に日立製作所傘下の日立アプライアンス(現日立グローバルライフソリューションズ)とジョンソンコントロールズ(Johnson Controls)の合弁により誕生した。

 式典では来賓として招かれた静岡市長の田辺信宏氏が「次の100周年に向けて、この清水の地で素晴らしい経済活動を展開し、さらに二酸化炭素を出さず地球温暖化の解決にも貢献する製品を世に送り出してほしい」と期待した他、日立グローバルライフソリューションズ 取締役社長の大隅英貴氏も「全世界でカーボンニュートラルの機運が高まっており、エネルギー消費量の多い空調機、冷凍機の省エネ性能の向上は喫緊の課題だ。清水事業所には世界のニーズに応える空調機、冷凍機の開発を期待している」と述べた。日立ジョンソンコントロールズ空調 清水事業所 所長の阿部宏樹氏は「これからの時代のテクノロジーリーダーとして、新しい社会ニーズを先取りし、皆さまに喜ばれる仕事にまい進していく。カーボンニュートラル実現に向けて新製品を送り出すことに尽力する」と誓った。

左から3人目が清水事業所の阿部氏、中央が静岡市長の田辺氏、右から3人目が日立グローバルライフソリューションズの大隅氏 前列左から3人目が清水事業所の阿部氏、中央が静岡市長の田辺氏、右から3人目が日立グローバルライフソリューションズの大隅氏[クリックで拡大]

 清水事業所は1943年に日立製作所の亀有工場清水分工場として操業を開始、当初は圧縮機や特殊鋳鋼を生産していた。その後、主力製品の移管などが続いたが、1962年に空調機や小型冷凍機などの汎用機の専門工場として独立した。

 1983年には、世界初のスクロールパッケージエアコンの開発に成功した。内部のスクロール圧縮機の仕組み自体は海外で1800年代後半に既に特許が出願されていたが、実際の量産に至るには加工技術などが追い付かなかった。清水事業所では設計から手掛け、μmレベルの精密な加工技術などを用いて量産にまでこぎ着けた。

 その後も、1988年に世界初の横型スクロール圧縮機搭載の特定フロン規制対応型スクロール冷凍機、2019年には業界初の凍結洗浄機能搭載パッケージエアコンを開発するなど、清水の地から画期的な業務用空調製品を多数開発していった。

スクロール圧縮機の量産第1号 清水事業所で展示されているスクロール圧縮機の量産第1号[クリックで拡大]

 清水事業所は現在、業務用の冷凍、空調機器の専門工場として操業している。2021年にはビル用マルチエアコン「フレックスマルチ-miniモジュール」の生産を開始した。同製品は、コンパクトなサイドフロータイプの室外ユニットで、限られたスペースでも設置が容易になっている。また、国内業界で初めて、組み合わせ接続により1系統で最大54馬力の大容量を構築することができるビル用マルチエアコンだ。2021年度の省エネ大賞において、製造・ビジネスモデル部門で経済産業大臣賞を受賞した。

「フレックスマルチ-miniモジュール」 2021年度省エネ大賞で経済産業大臣賞を受賞した「フレックスマルチ-miniモジュール」[クリックで拡大]出所:日立ジョンソンコントロールズ空調

 2022年には、次世代寒冷地向けビル用エアコン「フレックスマルチ 寒さ知らず」の出荷を開始している。同製品は低外気温でも高い暖房性能を発揮する。素早い暖房の立ち上がりを実現した他、系統別交互除霜機能で室温低下を抑制する。さらに、近距離無線通信機能を搭載しており、専用アプリケーションをダウンロードしたスマートフォンでカバーを開けることなく運転状況のデータが入手できる。

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