建屋は第1〜14工場まであり、月間の生産台数は2万5000〜2万7000台で推移し、ほぼ全量を国内に供給している。今回報道陣に公開された第4工場は清水事業所内で最大の面積を誇り、ビル用マルチエアコンを製造している。静岡市は2022年に台風15号の影響で記録的な大雨が降り、清水事業所がある清水区では5万5000世帯で断水するなど大きな被害が出た。清水事業所でも3割の従業員の自宅が断水になった。その中でも、1日も操業を止めなかったという。
工場内は随所で自動化が進行している。組立ラインでは、かつてはコンベヤーの上で組み立てを行っていたが、現在は大型のAGV(無人搬送車)に置き換えている。リフターも搭載されており、作業しやすい高さに調整できる。また、3台のロボットが配管のろう付けを行っているが、カメラで接合部を撮影し、位置ずれを補正してからろう付けを始める工夫を取り入れている。こちらは4台目のロボットの導入が決まっている。熱交換器のベントパイプの差し込みにもロボットを活用している。今後も、用途に応じて産業用ロボットもしくは協働ロボットの導入を進めていくという。
日立ジョンソンコントロールズ空調 ヴァイスプレジデント 兼 日本・アジア地域ゼネラルマネージャーの泉田金太郎氏は「空調産業は成長産業だと思っている。この成長産業の中で、成長企業にならなければならない。商品や技術への投資は惜しまない。RAC(ルームエアコン)20-PAC(パッケージエアコン)20を掲げているが、業務用空調でも家庭用空調でも20%のシェアを確保したい」と意気込む。
パワー半導体などの調達難に関しては、「状況が改善したかのようにメディアで伝えられることもあるが、われわれとして当面この状況が続くと考えており、予断は持っていない。われわれにとって供給できないということが最大の問題だ。以前はシングルソースで1カ所から大量に安く仕入れるというのが定石だったが、今はダブルソース、トリプルソースをやらざるを得ない」と泉田氏は語る。
近年、業務用空調機器の市場規模は年間90万台前後で推移しているといい、泉田氏は「コロナ禍を経てさまざまな投資が戻ってきている上、最近はビルに付加価値を付けようという動きも出ている。空気の質を良くしたり、遠隔管理を取り入れたり、カーボンニュートラルに向けた取り組みも進んでおり、業務用空調機器は当面の間、着実な成長が望める」と見通す。
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