2024年も長期にわたる品質不正の露見が続き、「日本品質」への信頼が揺らいでいる。特に最近は同様の品質問題が立て続けに見つかる“芋づる式品質不正”の露見が多く発生しており、2025年も品質不正の露見は続くことは明らかだ。製造業は、それを前提にどのような順番で“あるべき姿”に向け対策を進めるかが重要だ。
長らく日本の製造業における「日本品質」は世界中で支持をされてきたが、その根底が揺るぎ始めている――。
ここ数年、品質不正の発覚が相次いでおり、さらにそれが長期にわたって意図的に行われていたり、同様の手法を業界内で横断的に行われていたりしており、組織や業界ぐるみで「正しい検査」よりも「抜け道」を探すことを重視している姿が見えてきているからだ。特に2024年は、ある企業で発覚した品質不正に対し、当局が関連企業に対し再検査を要求し、芋づる式に不正が発覚するケースがよく見られている。これらを見ると、品質不正が業務工程内に深く定着し、そこに疑問も生まれない状況であることは明らかだ。
こうした状況から考えると、業務に深く定着した“意識外の品質不正”はあらゆる製造業の工程内に数多く残されていると考えるべきだ。2025年も同様の品質不正の発覚が相次ぐことが予想できる。品質不正を防ぐためには、教育や風土改革はもちろんだが、属人的な検査工程の排除が重要になるという点は、ここ数年も「新年展望」などで紹介してきたが、一足飛びに全ての検査の自動化を行うことは難しく、そのためのロードマップが重要になる。
2024年も多くの品質不正問題が発覚した。その中でも長期にわたり93件もの不正が行われ、注目を集めたのが、2024年1月に発覚したパナソニック インダストリーによるものだ。パナソニック インダストリーの電子材料事業部が製造、販売する成形材料、封止材料、電子回路基板材料において、UL Solutions(以下、UL)の認証登録や顧客との個別契約違反など、複数の不正行為があり、それを組織ぐるみで行っていたというものだ。2024年11月には外部調査委員会からの調査報告書と提言を受け、是正に向けた取り組みを進めているところだ。
また、2024年に多く見られたのが“芋づる式”に品質不正が発覚するケースだ。例えば、2024年6月にはスズキ、トヨタ自動車、ホンダ、マツダ、ヤマハ発動機の自動車メーカー5社による型式申請の不正行為が国土交通省に報告されたが、これは、ダイハツ工業などの不正事案を踏まえて、型式指定を取得する自動車メーカーなど85社に対して国土交通省が調査と報告を指示していたために立て続けに発覚したものだ。
さらに、舶用エンジンでは、IHI、カナデビア(旧社名:日立造船)、川崎重工業で相次いで検査不正が行われていたことが発覚している。これもまず2024年4月にIHI子会社であるIHI原動機において、舶用エンジンと陸上用エンジンの試運転記録に改ざんが見つかったことを発端とし、国土交通省から舶用エンジンメーカーに対する注意喚起があったことで2024年7月にカナデビア傘下の日立造船マリンエンジンとアイメックスで社内調査が行われ、データ改ざんが発覚した。さらにこの結果を受けて、国土交通省から舶用エンジンを対象とした実態調査の要請が行われ、2024年8月に川崎重工業での検査不正が明らかになった。
加えて、鉄道会社の輪軸組み立て作業におけるデータ改ざんについても、2024年9月に日本貨物鉄道(JR貨物)の不正が発覚してから、東京メトロ傘下のメトロ車両や京王重機整備などでの不正が“芋づる式”に明らかになっている。
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