これらの国土交通省など当局の指導があってようやく、“芋づる式”に品質不正が発覚する現状を見ると、2つの点が明らかになってくる。
1つ目は、単一企業ではなく業界を横断して不正が定着しているということだ。「赤信号みんなで渡れば怖くない」というわけではないだろうが、競争の中で1社が不正に手を染めれば、勝つために対抗して同様の手を使うことになり、それが慣習になってしまっている。
2つ目が、品質不正が、それぞれの業務に深く定着し、当事者が疑問を感じることがない状況になっているということだ。これだけ品質不正の話題が注目を集めているにもかかわらず、国土交通省などの指導があって初めて気付くという状況がそれを示している。例えば、舶用エンジンにおける川崎重工業の事例では、IHIでの発覚時の国土交通省の注意喚起では気付けず、カナデビア発覚時の国土交通省からの2度目の調査要請によって初めて気付くことができた。そういう点からすると、業務に深く定着しすぎて、内部調査だけでは表に出てこない状況になっているといえる。
これらの業務や商慣習の中に埋もれた品質不正が1企業だけでなく、業界を構成する企業横断で散在する状況を見ると、日本の製造業において、品質不正がないクリーンな状況になるのはまだ先の話だといえる。当面は、これらの業務内にこびりついた“意識外の品質不正”をあぶりだし、是正していくことが必要となる。
これらの対策としては、基本となるが、個々の品質検査の仕組みとしての対策、品質に関する教育など人的な対策、仕事の進め方などの組織としての対策などが必要となる。特に、品質不正が生まれる要因として「現場への過度なプレッシャー」があるというのは多くの外部機関が調査報告書で指摘しており、適切な業務の進め方を構築することが品質不正を防ぐ大きなポイントとなる。
長期にわたる品質不正を行っていたパナソニック インダストリーでは、外部調査委員会から不正につながった以下の9つの問題点が指摘されている。
これらに対し、再発防止に向けた提言として、以下の5つの方策を求められている。
これらの方策を推進する中で、あらためてそれぞれの業務プロセスを「品質保証」という切り口で見直すことで、“意識外の品質不正”を捉えなおすことができるかもしれない。また、日本の製造業はモノづくりを隠す傾向にあるが、あえてモノづくりプロセスを外部の目にさらすことで、外からの気付きを得ることなどもできるだろう。
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