EVプラットフォームをホンハイから買うか、VWから買うか自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

» 2021年10月23日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 既製のEVプラットフォームで新たにクルマを開発したい企業にとって、VWとホンハイの違いはどこに出てくるのでしょうか? MEBはVWにとって初めてのEVではないので、クルマとしての完成度はVWに軍配が上がるような気がします。また、MEBもさまざまな車両タイプに対応できるとうたっており、その点ではフォックストロンと大きな差はなさそうです。また、現時点ではどちらのプラットフォームにコスト競争力があるかを見極めるのも難しそうですよね。

 企業の立地や文化の違いでしょうか。ドイツと密にやりとりするのは難しいけれど身近な台湾なら、という考えはあり得そうです。また、伝統的な自動車メーカーでは動きが遅すぎると思われる可能性も、なきにしもあらずですね。あるいはプラットフォームを供給する条件が難しいかもしれません。

 過去の自動車業界の動きを思い出してみると、「クルマの心臓部」を共有する試みは決して簡単ではなかったように感じられます。例えば、A社のハイブリッドシステムをB社やC社が採用した例がありましたが、幅広い車種に拡大されて末永く搭載されたわけではなく、1代限りだったり、一部の車種にとどまったりしました。また、トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)の技術を見ていると、乗用車同士での共有よりも、乗用車から商用車、鉄道、船舶など異なる分野の方が広がりが早いのかもしれないと感じます。

 とはいえ、クルマの心臓部の共有が難しいのは伝統的な自動車メーカー同士に限ったもので、EVのラインアップをとにかく増やすという環境の中では、伝統的な自動車メーカーもなりふり構っていられず、「他社製の心臓」にも手を出してもおかしくありません。さらに、新興自動車メーカーにとって心臓部は車台であるとは限りません。そうなると、やはり他社製のEVプラットフォームの中からどう選ぶのか、基準が気になりますね。

自動車で4兆円?

 ホンハイが掲げる「自動車で4兆円」というビジネスの規模について考えると、不思議な感じがします。例えば、4兆円は2019年度の業績で言えばスズキやマツダを超えるくらいの売り上げです。四輪車のみのマツダは、2019年度の売上高が3兆4303億円、グローバル販売台数が141万9000台でした。

 新車販売だけでなくプラットフォームの外販も含めると4兆円の売り上げの内訳はもっと変わってくるでしょうけれども、新車を売るよりも多くの台数を販売する必要がありそうです。EVのコスト競争力を高めたいのにプラットフォームがプレミアムな値段では、新車としての価格は下がりません。

 世界全体で見れば、いまクルマを持っていない人が持つことで増える台数もありますが、渋滞や駐車スペースのことを考えるとどこかで頭打ちです。ホンハイが4兆円を達成するには、既存のパイが食われます。これから先、5年間でどのような変化が起きるのか、注目ですね。

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