九州大学は、糖尿病が脳内のインスリン抵抗性とDNAの酸化損傷を引き起こすことで、軽度のアルツハイマー病の病態が悪化することを明らかにした。糖尿病の予防により、アルツハイマー病の発症や進展を制御できる可能性が示唆される。
九州大学は2021年7月12日、糖尿病が脳内のインスリン抵抗性とDNAの酸化損傷を引き起こすことで、軽度のアルツハイマー病の病態を悪化させることを発表した。糖尿病の予防により、アルツハイマー病の発症や進展を制御できる可能性が示され、新たな予防と治療法の開発が期待される。
研究では、アルツハイマー病の初期モデルであるAppNL-F/NL-Fノックインマウスを使用。AppNL-F/NL-Fマウスは、生後半年から大脳や海馬にアミロイドβプラークが沈着し、生後1年半で非常に軽度の認知障害を示す。
AppNL-F/NL-Fマウスと野生型マウスのそれぞれに、生後半年から1年間、通常食または高脂肪食を与えて飼育した。その結果、高脂肪食を与えたマウスはどちらも同程度に肥満となり、二型糖尿病を発症した。そのうち、高脂肪食を与えたAppNL-F/NL-Fマウスのみが、顕著な認知機能障害を示した。
高脂肪食を与えたAppNL-F/NL-Fマウスは、海馬のインスリン抵抗性に加えて、アミロイドβの沈着と、細胞障害性のミクログリアが増生するミクログリオーシスが著しく悪化していた。また、海馬歯状回では顆粒細胞層が萎縮しており、顆粒細胞の核にグアニン塩基の酸化物が蓄積していた。このことから、DNAの酸化損傷が進行していることが明らかとなった。
さらに、高脂肪食を与えたAppNL-F/NL-Fマウスでは、アミロイドβ結合タンパク質の1種であるトランスサイレチンの発現が減少。トランスサイレチンの枯渇が、海馬のアミロイドβ沈着の増加原因であることが示唆された。
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