九州大学は、糖尿病治療薬「メトホルミン」の致死的な副作用である乳酸アシドーシスに対する治療薬として、PHD阻害剤が有効であることを明らかにした。
九州大学は2017年6月30日、糖尿病治療薬「メトホルミン」の致死的な副作用である乳酸アシドーシスに対する治療薬として、PHD阻害剤が有効であることを発表した。九州大学 生体防御医学研究所 特任准教授の南嶋洋司氏と慶應義塾大学医学部の研究グループが第一三共と共同で行ったもので、成果は6月12日に米科学誌「Molecular and Cellular Biology」電子版に掲載された。
メトホルミンは、世界で最も多く処方されている2型糖尿病の治療薬だ。血糖を低下させる作用以外にも、がん細胞の増殖抑制や発がん率の低下、寿命延長などの作用が報告されている。一方で、発症頻度は低いものの、腎機能が低下した人が内服すると、副作用として致死率が約50%という「メトホルミン関連乳酸アシドーシス(MALA)」を発症することが問題となっていた。
PHD阻害剤とは、酸素濃度センサー分子であるプロリン水酸化酵素PHDの酵素活性を抑制する薬剤だ。低酸素状態に対して、生体応答反応(低酸素応答)を活性化させるために使用される。
研究では、アデニン含有食を与えて腎機能が低下したマウスに、メトホルミンを内服させた。このマウスは、溶媒のみを内服させたマウスと比較して血中乳酸値が有意に上昇し、MALAを発症。このMALA発症マウスにPHD阻害剤を投与したところ、溶媒のみを投与したマウスと比べて生存率が劇的に改善した。
これは、PHD阻害剤によって乳酸からのブドウ糖の合成(糖新生)に関わる遺伝子群の発現が上昇し、血中乳酸の肝臓や腎臓への取り込みが高進することで起こる。
この成果は、これまで対症療法しかなかった乳酸アシドーシスに対して、PHD阻害剤が特効薬となる可能性を示すものとなる。メトホルミン内服に限らず、致死的乳酸アシドーシスに対する救済策の確立につながることが期待される。
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