名古屋市立大学らは、脳内ヒスタミン神経の活動ゆらぎが保存された記憶へのアクセスを左右する仕組みを解明した。記憶や認知機能の時間変動のメカニズム解明に役立つ可能性がある。
名古屋市立大学は2026年6月12日、脳内ヒスタミン神経の緩やかな活動変動が、記憶へのアクセスを左右することを明らかにしたと発表した。北海道大学、熊本大学との共同研究による成果で、記憶があるのに思い出せない仕組みを解明した。
名前を知っているのに出てこないなど、同じことを思い出そうとしても、すぐに思い出せる時とそうでない時がある。今回の研究では、記憶機能に関わる可能性が示されている、脳内のヒスタミン神経に注目した。
まず、マウス視床下部の結節乳頭核にあるヒスタミン神経の活動をリアルタイムで記録し、覚醒中にも数十秒スケールの緩やかなゆらぎが存在することを確認した。このゆらぎは、脳波や瞳孔、顔の動きと連動していた。
次に、音の後に砂糖水を与える学習をしたマウスを用いて、学習した記憶が行動としてどの程度表れるのかを調べた。記憶の表出の指標として、音を聞くと報酬を予測して舌を出すなめる行動を使用した。リアルタイム解析の結果、音を提示する直前にヒスタミン神経活動が高いタイミングでは、低いタイミングに比べて記憶に基づく行動の頻度が約40%高くなることを見いだした。
光遺伝学で音の直前にヒスタミン神経活動を抑制したところ、記憶の表出が低下した。反対に活性化させると表出が高まった。このことからヒスタミン神経は、学習した記憶が行動として表れる過程を調節していると考えられる。
また、カルシウムイメージングによる扁桃体基底外側核の解析では、扁桃体に伸びるヒスタミン神経線維の末端を活性化すると、記憶の表出が高まり、神経細胞集団が記憶に対応する応答パターンをより強く忠実に再現していることが判明。これにより、ヒスタミン神経が扁桃体の神経集団をあらかじめ整えて準備状態を作ることで、記憶を引き出しやすくしている仕組みが明らかになった。
これまで記憶障害は、記憶そのものが脳から失われることとして理解されてきた。今回の成果は、時々の脳内状態により、保存された記憶へアクセスしにくくなる場合があるという新たな視点をもたらすものだ。加齢や認知症に伴う記憶や認知機能の時間変動の解明に役立つとともに、将来的には記憶へアクセスしやすい脳内状態を非侵襲的に評価するバイオマーカーや、状態を整える新しい治療および予防法の開発への応用が期待される。
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