北海道大学は、脳内のヒスタミン神経系を刺激する薬物を投与すると、忘れた記憶をスムーズに思い出せるようになることを明らかにした。
北海道大学は2019年1月9日、脳内のヒスタミン神経系を刺激する薬物を投与すると、忘れた記憶をスムーズに思い出せるようになることを明らかにしたと発表した。同大学大学院薬学研究院 講師の野村洋氏と、京都大学、東京大学の共同研究グループによる成果だ。
実験では、マウスにおもちゃを見せてその形を学習させた後、ヒスタミン神経系を活発化する薬を投与した。通常のマウスは、3日以上経過するとおもちゃを忘れていたが、薬を投与したマウスでは、1カ月経過した場合でもおもちゃの記憶を思い出すことができた。このマウスの脳内を詳細に解析したところ、嗅周皮質と呼ばれる脳領域の活動上昇が見られた。
このデータを基に、ヒトへの効果を調査した。38人の参加者にあらかじめ多数の写真を見せ、1週間後に記憶テストを実施した。その際、トレーニングで見せた写真と見せていない写真、見せた写真と類似の写真を見せて、写真を覚えているか質問した。その結果、ヒスタミン神経活性化薬によって正解率が上昇した。特に、もともと記憶成績が悪い人では、薬の効果が大きいことが分かった。
これらの結果から、ヒスタミンが神経回路にノイズを加えることで、記憶を回復させると考えられるという。そのため将来的には、脳内ヒスタミンや記憶のメカニズムの解明につながる成果であるといえる。また、アルツハイマー病など、認知機能障害の治療薬開発につながることが期待される。
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