東京工業大学は、細胞内で生じるタンパク質結晶化現象を利用して、目的の3次元構造を自動的に合成する手法を開発した。細胞を分子レベルの3Dプリンタとして活用している。
東京工業大学は2021年5月10日、細胞内で生じるタンパク質結晶化現象を利用して、目的の3次元構造を自動的に合成する手法を開発したと発表した。細胞を分子レベルの3Dプリンタとして活用している。
研究では、昆虫ウイルスに感染した細胞内で、タンパク質結晶化現象によりカテプシンの結晶ができる際、ファイバー構造を形成することに着目。このファイバー構造のタンパク質を水溶液に溶かし出す手法を開発した。
具体的には、結晶内で隣接するカテプシンに存在するアミノ酸をシステインに置換し、細胞から結晶を取り出した。その後、空気中で自動的にシステイン同士を結合させることで、目的のファイバー構造を溶液中に溶かし出すことに成功した。
また、細胞内で取得した結晶を単離してその構造を決定したところ、酸化剤を添加しなくても、ジスルフィド結合の形成が確認できた。溶液中の結晶を透過型電子顕微鏡で観察すると、2本のファイバーが束になった構造を形成していた。一方、細胞内の結晶にはジスルフィド結合は確認できず、細胞から単離された後に、空気中で自動的にジスルフィド結合を生成することが示された。
今回開発した合成手法は、細胞を分子レベルの3Dプリンタとして利用しており、人工分子を一切使用しない持続可能なナノレベルのインテリジェント材料合成技術として期待できる。DNAにより求める構造と反応をプログラミングできるため、さまざまなタイプのタンパク質集合を作成できる可能があるとしている。
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