名古屋大学は、タンパク質の機能解析に重要となる、人工オーキシンを用いた高感受性タンパク質分解系を確立した。従来の手法より1000倍高い感受性を示し、低毒性の分解系として、タンパク質の機能解析や創薬での利用が期待できる。
名古屋大学は2020年10月23日、タンパク質の機能解析に重要となる、人工オーキシンを用いた高感受性タンパク質分解系を確立したと発表した。人工的に改変したオーキシン分子とその受容体を用いて、従来のオーキシンデグロン法に比べて感受性を1000倍高めることに成功した。大阪大学との共同研究による成果となる。
オーキシンデグロン法とは、植物のオーキシン依存的タンパク質分解系を植物以外の生物種に導入し、標的タンパク質を分解する手法。今回の研究では、名古屋大学が設計した高感受性の人工オーキシンと受容体のペアを用いて、従来法の1000分の1の量のオーキシンで、標的タンパク質の分解を誘導することに成功した。
さらに、この高感度オーキシンデグロン法がどの細胞で働くかを調べるため、染色体分配で機能する因子の分解誘導を実施した。その結果、マウスES細胞などの動物の培養細胞で、低濃度の人工オーキシンによる因子の分解が確認できた。
これらの細胞では、染色体の分配異常による細胞増殖という表現型も確認。これらの成果により、高感度オーキシンデグロン法が、さまざまな動物の培養細胞で機能することが示された。
オーキシンデグロン法は、遺伝子の機能解析で利用されているが、動物の培養細胞では分解誘導剤として使用するオーキシン濃度が高く、細胞にダメージを与えるケースがあった。今回開発した高感度オーキシンデグロン法は、マウスやヒトのさまざまな細胞で機能することから、速やかかつ低毒性な分解系として、タンパク質の機能解析や創薬での利用が期待できる。
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