京都大学は、授乳による母親のオキシトシンホルモン変動には個人差があるが、授乳によりオキシトシンが高まった母親ほど、快表情を知覚する正確性が高まり、不快表情を知覚する正確性が低くなると明らかにした。
京都大学は2020年6月4日、授乳による母親のオキシトシンホルモン(オキシトシン)変動には個人差があるが、授乳でオキシトシンが高まった母親ほど、快表情を知覚する正確性が高まり、不快表情を知覚する正確性が低くなると発表した。同大学教育学研究科 教授の明和政子氏らの研究グループが、麻布大学と共同で明らかにした。
母乳授乳は、養育者の心的ストレスを軽減したり、乳児に対する快の感情を深めたりする。オキシトシンは分娩を促したり母乳を放出させる働きがあるが、近年は対人関係を円滑に進めたり、記憶や学習能力を高める働きも注目されている。
今回研究グループは、初産で生後2〜9カ月児を育児中の母親51人を「母乳授乳する」と「乳児を抱く」のいずれかの行為に割り当て、行為の前後に唾液採取をしてオキシトシン値を計測した。その結果、オキシトシンの平均値と行為前後での変化量に、2つのグループにおける統計上の有意差は見られず、授乳した後、あるいは乳児を抱いた後に全ての母親のオキシトシン値が高まるわけではないことが明らかとなった。
また、成人の表情の情報処理に関して2つの課題を実施し、オキシトシンの変動と表情の感じ方の関連を調べた。
授乳後にオキシトシン値が高まった母親ほど、快の表情(うれしい)を知覚する正確性が高く、不快の表情(怒り)の知覚の正確性が低くなった。このことから、母乳授乳を行った母親では、オキシトシン値の変動と表情の感じ方に関連性があることが分かった。
これまでヒトの授乳が心理や行動の側面に与える影響については、母乳授乳と人工哺乳の比較により検討されている。しかし、オキシトシンの分泌にはかなりの個人差があることが見落とされてきた。今回の研究成果は、オキシトシン分泌の個人差を考慮して、対人心理や行動特性に与える影響を初めて示したものになる。
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