筑波大学は、生物由来の界面活性剤が細菌を死滅させることなくバイオフィルムを除去し、さらに石油化学系の界面活性剤と組み合わせることで、除去効果が100倍以上向上することを発見した。
筑波大学は2020年6月3日、生物由来の界面活性剤が細菌を死滅させることなくバイオフィルムを除去し、さらに石油化学系の界面活性剤と組み合わせることで、除去効果が100倍以上向上することを発見したと発表した。この成果は、同大学生命環境系教授 野村暢彦氏らの研究グループによるものだ。
細菌が集団で形成するバイオフィルム(菌膜)は、さまざまな疾患の原因になり得ることから除去する必要があるが、耐性菌が出現しないよう、細菌を殺さずに除去することが求められる。また、バイオフィルム除去に一般的に用いられている界面活性剤は、石油化学製品であるため、環境に配慮した生物由来の界面活性剤が注目されている。
研究グループは、生物由来の界面活性剤として、Candia属の酵母が産み出す糖脂質「ソホロ脂質(SLx)」を使用し、バイオフィルムを形成しやすい環境を模倣したマイクロ流路デバイスを用いて、緑膿菌が形成するバイオフィルムの除去効果を検証した。
その結果、SLxはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)など既存の界面活性剤3種と比べて、優れたバイオフィルム除去効果を持つことが明らかになった。
SLxは、細菌を殺さずに短時間でバイオフィルムを除去するため、既存の界面活性剤と異なるメカニズムが働いていると考えられる。そこで、SLxの作用メカニズムを調べたところ、細胞とガラス表面の間の接着力およびバイオフィルム内部の凝集性を弱めることが分かった。
さらに、SLxとSDSを組み合わせて用いると、それぞれを個別に使うよりも除去速度が向上して、除去量も多くなり、100倍以上の除去効率が示された。組み合わせによる相乗効果で、SDSの濃度が低くても効率的な除去が可能になることから、石油由来の界面活性剤の使用量や除去コストを削減し、人体への投与適用も期待される。
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