東京大学は、血管内皮の機能を総合的に評価できる、手のひらサイズの「血管チップ」を作製した。血管新生因子「EGFL7」の機能を明らかにするとともに、血管チップが血管内皮の総合的な機能解析に有用であることを実証した。
東京大学は2019年1月28日、同大学生産技術研究所 准教授の松永行子氏らの研究グループが、血管内皮の機能を総合的に評価できる、手のひらサイズの「血管チップ」を作製したと発表した。また、これを用いて、血管新生因子「EGFL7」の機能解析に成功した。
研究グループは、血管新生が活発な組織で発現が上昇するタンパク質EGFL7に着目。これを解析するため、ヒトの血管内皮細胞を用いて、人工的に微小血管構造を作り上げた血管チップを作製した。
この血管チップに血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を添加し、血管新生を誘導したところ、EGFL7発現低下モデルでは血管新生が抑制された。遺伝子発現解析の結果、血管新生に関連する遺伝子の発現が増減しており、EGFL7欠如が血管新生のシグナル伝達経路を乱した結果として、血管新生が抑制されることが確認できた。
また、EGFL7の発現低下により血管透過性が亢進し、血管内皮の恒常性が乱れることも観察できた。このメカニズムを検討するため、透過性調節を担う細胞間結合に着目。血管内皮細胞が持つ細胞間結合分子の血管内皮カドヘリンの発現パターンを解析したところ、正常な血管より結合が弱まっていた。そこで、血管内皮カドヘリンの作用を検証した結果、EGFL7が血管内皮カドヘリンの機能調節に必要なリン酸化を制御していること分かった。血管内皮カドヘリンは、血管新生にも関与していることが知られている。
この成果は、EGFL7の機能を明らかにするとともに、血管チップが血管内皮の総合的な機能解析に有用であることを実証したものだ。血管チップは、網膜症やがんなどの血管関連疾患のメカニズム解明や創薬研究への寄与が期待できる。
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