神奈川県立産業技術総合研究所は、細胞小器官に存在するイオンチャネルが組み込まれた人工細胞膜チップを開発した。この技術を活用して、細胞内のさまざまな部位に存在するイオンチャネルの電気的な計測と薬物阻害試験に成功した。
神奈川県立産業技術総合研究所は2018年12月3日、細胞小器官に存在するイオンチャネルが組み込まれた人工細胞膜チップを開発したと発表した。この技術を活用して、細胞内のさまざまな部位に存在するイオンチャネルの電気的な計測と薬物阻害試験に成功した。東京大学生産技術研究所、SEEDSUPPLYとの共同研究による成果だ。
研究グループはまず、目的のイオンチャネルを持った細胞を超音波で破砕・遠心分離し、目的のイオンチャネルを含んだ粗精製膜画分を作製した。これを16チャネル人工細胞膜チップに融合させることで、イオンチャネルが人工細胞膜に組み込まれ、電気的計測が可能になった。
実験では、リソソームなどに多く存在するTRPML1や形質膜にあるhERGなど、多数のイオンチャネルシグナルの測定に成功。さらに各イオンチャネルにおいて、阻害剤によるイオンチャネル機能阻害試験にも成功した。
この技術により、細胞小器官にあるイオンチャネルの薬剤試験を簡便化できる。また、従来のパッチクランプ法では測定が困難だった細胞小器官のイオンチャネルが計測可能になったことで、その機能解明に貢献する。さらに、細胞小器官のイオンチャネルをターゲットとした創薬開発につながることが期待される。
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