東京大学は、厚みがわずか2分子分と極薄で、大面積の有機半導体デバイスを構築する技術を発表した。同技術により均質かつ高性能な極薄半導体を得られることから、超高感度分子センサー開発などへの応用が期待される。
東京大学は2018年4月26日、厚みがわずか2分子分と極薄で、大面積の有機半導体デバイスを構築する技術を発表した。同大学大学院工学系研究科 教授の長谷川達生氏(産業技術総合研究所フレキシブルエレクトロニクス研究センター 総括研究主幹兼務)らによる研究成果だ。
研究グループは、極めて薄い生体細胞膜のように、基板上に分子が整然と並んだ2分子膜1層から成る半導体を、簡易な塗布法を用いて形成する手法を考案した。この手法では、厚みが2分子分の約10nmで、かつ100×100mmの面積全体にわたって分子が規則正しく整列した有機半導体を製造できる。
基本素子であるTFT(薄膜トランジスタ)向け半導体を塗布や印刷で形成するには、常温で溶解する「π(パイ)電子系」の有機分子から成る有機半導体が適している。しかし従来の方法では、膜の厚みや多層化の制御がうまくいかず、均質な有機TFTを得るのは難しかった。
研究グループは、π電子骨格に連結するアルキル鎖が、生体細胞膜に似た2分子構造を形成することを発見。長さが自由に変えられるアルキル鎖の特徴を生かし、長さの異なる2種の分子の混合溶液で製膜を試みたところ、100×100mmという大面積で、均質かつ高性能な極薄半導体を得ることに成功した。
同技術は、極薄TFT超高感度分子センサーやフレキシブルな生体センシングデバイスの開発に応用されることが期待される。
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