NTTドコモとは「もっと簡単に楽しく、家電と人をネットワークにつなぐことを目指す」(本間社長)として省電力広域無線通信技術「LPWA(Low Power Wide Area)」を活用したIoT家電の実用化に向けて、ビジネスモデル開発、技術開発、技術検証などを目的とした共同実証実験を実施することで基本合意した。2018年秋をめどに、東京、大阪、滋賀の三地域で合計1000台規模のLPWA通信機能対応家電を用いた実験を順次開始する予定だ。全国規模、かつ大量の家電へLPWA通信技術の導入を想定した実証実験は、国内初(同社調べ)の取り組みとなるという。
LPWAは、低消費電力で長距離通信を実現することから、IoTに最適な無線技術として幅広い業界で関心が高まっており、NTTドコモでは積極的にLPWAを活用したネットワークサービスの提供に取り組んでいる。一方、パナソニックは、スマートフォンやインターネット回線経由でクラウドサービスと接続するIoT家電を既に発売しているが、クラウドサービスを利用するには、利用者が家電とネットワークの接続を個別に設定することが必要だ。LPWA機能が搭載されたIoT家電を実用化することで、インターネット回線がない家庭でも電源を入れるだけで、LPWA通信技術を介してクラウドサービスが利用できるようになる。
パナソニックでは既に、NTTドコモの「自然対話エンジン」を活用して、スマートフォンからテレビやレコーダーの番組検索や番組予約ができるサービスを、2017年9月から開始している。今後、両社ではLPWAを活用したより安全で安心して使える家電や、AIを活用した便利で快適な家電の企画・検討を進める。また、NTTドコモが2018年春から開始する、利用者との対話を通じて個々人の要望に的確に応え、サービスを提供する「AIエージェントサービス」の利用も視野に、IoT家電向けクラウドサービスの企画・検討も進める。
同実証実験を通じてLPWA通信技術を搭載したIoT家電の技術とビジネスモデルが確立できれば、実用化フェーズに移行する。将来的には年間数百万台規模のパナソニック製のLPWA対応IoT家電を、ドコモの全国規模の広域通信網を経由して両社のクラウドサービスに接続させ、IoT時代の新たな体験や価値創出を目指す。
スクラムベンチャーズ(SV社)とは、新規事業の創出促進を目的とした新会社「BeeEdge(ビーエッジ)」を設立する。シリコンバレーと日本でアーリーステージのスタートアップへの投資を行うSV社と、新規事業の創出を目指す同アプライアンス社が共同で出資、運営する予定だ。新会社は、米国サンフランシスコをベースとする。SV社は、最先端トレンドへの知見、新規技術・ビジネスモデルに対する情報収集力を駆使し、さまざまな事業化支援を行ってきた。パナソニックは、家電を中心とした製品提案で利用者の暮らしに貢献するだけでなく、近年では次世代の家電ビジネス創出に向けた新規事業の創出にも注力する。
新会社は、まずパナソニック社内の有望な新規ビジネスアイデアを切り出して事業会社化する取り組みから開始し、出資を行う。適切な支援を行うことなどによるスピーディーな事業化を実現する。新会社の役割について本間社長は「パナソニック本体では、描きにくいような、斬新でとがったアイデアを実現に結び付けるためのプラットフォームを提供する。また、最近のシリコンバレーのベンチャーを見ていてICTが家の中にもシフトしてきていることを感じる。こうした新しい技術を取り入れて、日本やアジア地域にも展開したい。パナソニックの既存の事業部にも、こうした取り組みが刺激を与えることになる」と述べた。新会社では1年間で数件アイテムの実現を期待するという。この他、オープンイノベーションの領域では、AI・ロボティクスの分野で千葉工業大学との産学連携の取り組みも進めている。
デザイン面の強化も進めており「2018年4月には京都市内に、『パナソニックデザイン京都』を設立し、家電デザイン部門をこの新たな拠点に集結させることにした。海外人材の獲得や、情報の流動化を加速させ、京都から新しい家電デザインを発信したい」(本間社長)と述べた。
この他、Googleアシスタント採用による顧客体験の向上に取り組むことも発表した。同社のIoT家電の制御を実現し、外部サービスや、同社のクラウドサービスと連動し、家電の機能活動の進化を実現する。インタフェースとしては家庭内のスピーカーに加え、戸外ではヘッドフォンを想定しており、2018年度をめどにこれら製品を日本市場へ順次導入する予定だ。LINEとの協業も推進中で、LINEのClova搭載のスマートスピーカーと同社のIoT家電との連携を検討しているという。
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