IoTやAIなどを活用する「第4次産業革命」の動きが活発化している。しかし、国内外の企業を調査したアンケートでは、日本の製造業はこの革命に積極的な姿勢を見せているとは言い難い。いわば、第4次産業革命に対してやや及び腰になっているといえる。
総務省は2017年7月に「平成29年 情報通信に関する現状報告」(以下、情報通信白書2017)を公開した。今回の特集テーマは「データ主導経済と社会変革」。データ主導経済(Data-Driven Economy)の下で、多種多様なデータの生成・収集・流通・分析・活用をすることで、あらゆる社会経済活動を再設計し、社会の抱える課題の解決が図られるようになるという変化の状況を示した。
情報通信白書2017では、第1章でデータを生成する重要な手段としての「スマートフォン」の普及とその経済的インパクトについて、第2章でデータ流通と利活用をめぐる状況についてを取り上げた。さらに第3章では、それらからつながる「第4次産業革命」がもたらす社会的・経済的インパクトについて整理している。
本稿では、情報通信白書2017の第3章「第4次産業革命がもたらす変革」から、日本の製造業が第4次産業革命をどう捉えていくべきかを2回に分けて考察する。前編では第4次産業革命の概要と調査による企業の反応について取り上げる。
2016年1月にスイス・ダボスで開催された第46回世界経済フォーラムの年次総会(通称「ダボス会議」)では、主要テーマとして「第4次産業革命の理解」が取り上げられ、その定義などが議論された。翌年2017年1月のダボス会議では、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ロボット技術などを軸とする第4次産業革命をどう進めるかについて話し合われている。
同会議では、IoT、AIがけん引する第4次産業革命とは「あらゆるモノがインターネットにつながり、そこで蓄積されるさまざまなデータをAIなどを使って解析し、新たな製品・サービスの開発につなげる」と定義している。
「第4次産業革命」という言葉が一般的に認識し始められたのはドイツの影響が大きいとされている。ドイツが第4次産業革命を意味する「インダストリー4.0」を2011年の産業技術の展示会「ハノーバーメッセ2011」で初めて提唱。その後、欧米諸国を中心に、近年はアジア諸国でも第4次産業革命を意識した国家戦略や関連の取り組みが進められてきた。主要各国の取り組みの状況は、以下の通りだ。
日本では2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」などにおいて、第4次産業革命が成長戦略の中核として位置付けられている。第4次産業革命に関連する分野を伸ばすことで「約30兆〜40兆円の付加価値を作り出す」とする。
また、2017年6月に閣議決定された新たな成長戦略である「未来投資戦略2017」の基本的考え方でも、第4次産業革命によって、IoTやビッグデータ、AI、ロボット、シェアリングエコノミーなどをあらゆる産業や社会生活に取り入れる必要があるとしている。民間主導である「IoT推進コンソーシアム(ITAC)」では、米国のIICなどとIoT分野の協力に向けた覚書を締結している。また、2017年3月には日本版の第4次産業革命を示すコンセプト「Connected Industries」を打ち出した。
第4次産業革命については、以下の連載記事でも分かりやすく解説している。より詳しく知りたい方は参考にしてほしい。
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