第4次産業革命に向けた各企業の取り組みの進捗度はどのようなものなのだろうか。「検討段階」「導入〜基盤化段階」「利活用〜変革段階」の3段階の定義で、自己評価をしてもらった。日本は「検討段階」が最も多く、他国では「導入」や「基盤化」の段階が多い。現状では、日本に比べて一歩先へと進んでいる状況が見られる。
さらに、IoTやビッグデータ、AIについて、それぞれの導入率と導入意向の進展を国別に比較すると、海外企業では2025年以降はほぼ全ての企業で導入意向があるが、日本は他国と比べると普及の速度がやや遅い傾向が見られる。
第4次産業革命に向けて取り組んでいる割合では、日本の一般企業は他国企業と比べると低い。ITAC企業は他国企業と同水準だという状況が見られる。
日本の一般企業について属性別にみると、売上高が大きいほど取り組みの割合が高い。業種でみると「製造業」「商業・流通」「サービス業」などの意識の割合が低い。一方で、ITAC企業では中小規模の企業においても意識が高く、また製造業など一般企業で取り組みが遅れている業種においても進展していることがうかがえる。
日本の企業の業種別の傾向に着目すると、一般企業ではICTと非ICTの業種で違いが見られる。特に非ICT企業は「その他・方向性が変わらない」が多い。また、製造業とICT企業は既存事業よりも新規事業やビジネスモデルをやや志向する傾向が見られた。
IoTやビッグデータ、AIなどの新しい技術が実用段階に入り、国境・産業の垣根を越えて世界中のビジネスが変わろうとしている。しかし、アンケート調査の結果を見ると、日本は他国から第4次産業革命の価値を享受する国の1つとして期待されているものの、第4次産業革命に対する抵抗感が目立つ状況が見える。決して全業種で積極的に取り組めているわけではないということが分かる。
後編では、第4次産業革命による変革が実現する場合の経済的なインパクトについて取り上げたい。
翁長潤(おなが じゅん)
フリーライター。証券系システムエンジニア、IT系雑誌および書籍編集、IT系Webメディアの編集記者の経験を生かし、主にIT・金融分野などで執筆している。
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