パナソニック コネクティッドソリューションズ社はこのほど新社長に就任した樋口泰行氏が記者向けの懇談会に登壇。「現場」を基軸とした“ラストワンマイル”にこそ勝算があるとした。
パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社は2017年6月19日、新社長に就任した樋口泰行氏が記者向けの懇談会に登壇し、「現場」を基軸とした“ラストワンマイル”にこそ勝算があると戦略を紹介した。
樋口氏はもともと1980年にパナソニック(旧松下電器産業)に入社して12年間を過ごした後、ボストン・コンサルティングやアップル、日本ヒューレットパッカード(HP)、ダイエーなどを経て、日本マイクロソフトの社長を10年務めた。その後2017年4月にパナソニックへの復帰を決め、CNS社社長に就いた異色の経歴の持ち主である。
パナソニック CNS社は、もともとパナソニックの社内カンパニーであるAVCネットワークス社を母体とし、ストレージ事業部、ビジュアルシステム事業部、ITプロダクツ事業部、セキュリティシステム事業部、コミュニケーションプロダクツ事業部、オフィスプロダクツ事業部、パナソニック アビオニクス、パナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)、プロセスオートメーション事業部(旧スマートファクトリーソリューション事業部)など多岐にわたる事業を抱える。
コネクティッドソリューションズは「コネクティッド」の名称の通り、各種の技術や事業、組織や顧客を「つなぐ」ことを意識したものだ。樋口氏は「クラウドやIoT(モノのインターネット)、ソフトウェアなどでつなぎ、データを集めてコントロールしたり、単品や要素技術同士をつないだり、組織横断的に人がつながったり、顧客とつながったりすることで、より高い付加価値を生みだしていくということが、コネクティッドに込めた思いだ」と述べている。
これらの多彩な事業を抱え、多彩な技術やデバイスを抱え、多彩な顧客を抱えることを土台とし、これらを「つないでいく」ことで強みを発揮するという考えだ。
具体的には「エンドユーザーから見たラストワンマイルに付加価値がある」と樋口氏は述べる。「出来合いの製品を提供する世界もあるが、顧客が『これで助かった』と思うものを、単品の製品を組み合わせたり、現地ですり合わせを行って作り出したり、モノが現実に動く世界になればなるほど、最終的なユーザーが求めるソリューションに対する付加価値は大きくなる」と樋口氏は語っている。
ただ、単純にすり合わせの領域を増やすだけであれば全ての製品やサービスがカスタム品となり、収益性は悪化する。樋口氏は「すり合わせが必要なところにこそ、差別化の源泉があると考えるが、横展開可能なものに仕立てあげる発想がなければビジネス的な競争力は作り出せない。すり合わせの先に市場が大きくなるような、枠組みを捉えた取り組みを進める」と述べる。基本的には「選択と集中が絶対に必要となる」(樋口氏)とし、集中するところで利益を大きく確保するために必要なリソースを整えていく考えである。
こうしたソリューションは現在ではICT(情報通信技術)なしでは考えにくくなっているが、ICTの領域で考えるとグローバルベンダーなどがプラットフォーマーとして多くの利益を占有する仕組みに対する懸念も生まれている。
樋口氏の前職は日本マイクロソフトでありまさにグローバルプラットフォーマーとしての確固たるポジションを築いていたが「ICTを活用する場合、グローバルプラットフォーマーには太刀打ちできない領域は確かにある。日本マイクロソフト時代には確かに産業ごとの細かいニーズに応えていくような思想はなかった。共通のプラットフォームやその上に乗るツールで利益を総取りするような発想だった」と当時を振り返る。
一方で、グローバルプラットフォーマーには届かない点もあると樋口氏は指摘する。「グローバルプラットフォーマーはクラウドなどで規模の経済性による優位性を発揮しており、今さらパナソニックが多少投資したところで追い付けない。しかし、そうしたアプローチは二律背反的に、ラストワンマイルの領域は取りに行くことができない。人がいる以上、現場にはさまざまな端末が必要だが、そうした領域もプラットフォーマーでは届かない。『現場』を基軸としたインテグレーターというポジショニングを取り、立地(収益性)の良いところを見定めていくことができれば十分勝負できる」とパナソニックの優位性について樋口氏は語る。
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