物理実体を表現してそれを活用する領域は既にほぼカバーされた感があるCADですが、デジタル化や自動運転、IoTがトレンドとなる時代の中で、CADも今までと異なる役割を担うようになっています。これからのCADがどのような役割を果たすのか、3つの観点でまとめました。
1つ目は、製品を1つのシステムとして考え、製品性能を追求する場合、CADという物理表現は製品性能の1つの要素にすぎず、電気電装、制御系、ECUなどその他の要素と連携しながら設計検討するという観点です。
現在、自動車をとってみても、製品開発の重点領域はソフトウェアや制御に移ってきています。そのような中で、例えば、制御のコントロールモデルに対して3D CADで定義されたモデルを組み込み、実際の振る舞いをシミュレーションすることが可能になっています(図2)。また、電気系の設計と3D CADの設計はツールが異なるため今まではプロセスが分断されていたわけですが、リアルタイム同期ができるようになり、同時並行で電気/機械設計検討が進められるようもなっています。
2つ目は、新しい製造手法である付加製造(Additive Manufacturing)への適用です。
従来の中規模〜大規模の部品量産では、型を利用して成形し、そこに機械加工を施して最終形にするのが一般的でした。しかし、付加製造を利用することで、従来成形できなかった形状が実現可能となり、それによってより高性能な部品を開発できるようになります。
例えば、内部格子構造で軽量化を図ることが可能です。また、近年の注目技術である位相最適化によって3D CAD内で得られた形状は、型で製造することは難しくても、付加製造であれば実現可能になることがあります(図3)。PC上で作成されたドキュメントをプリンタで印刷するように、3D CADのデータを3Dプリンタで印刷することも容易になっています。
3つ目は、生産準備業務での活用です。もちろん、これまでも工場ライン/設備用CADというものは存在していましたが、さらにツールを深化させ、3D CAD内に定義されたバーチャルな工場ライン/設備を実体の制御ハードウェアから動作させる、バーチャルコミッショニングと呼ばれるシミュレーションの活用が拡大しています(図4)。いわゆる、生産領域における「デジタルツイン」の実現です。このシミュレーションにより生産準備期間の短縮と製造品質の向上を図ることができます。
3D CADは従来機械設計の領域でしたが、これからの時代は複合領域の設計や生産側にも活躍の幅が広がり、IoT時代のモノづくりにも貢献していくことになると考えられます。
次回は、CAEを取り上げたいと思います。
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