MONOist開設10周年に合わせて、MONOistで記事を執筆していただいている方々からの特別寄稿を掲載しています。今回は「3D設計推進者の眼」を執筆いただいている飯沼ゲージ製作所の土橋美博氏による寄稿です。
MONOist10周年おめでとうございます。10年という時間について、3D CAD推進を行う私の目線でお話しします。
今から10年前である2007年といえば、バブル経済崩壊後に明かりが見えた時期であったと記憶しています。まさかその後、リーマンショックという次の経済危機を迎えるとは皆、思ってもおらず、「PLM」を扱う業界も活気を取り戻した感じがありました。私自身も、景気回復の中、社内の3Dデジタルデータ展開を行うために、3D CAD推進活動を「NEXT 3D」と銘打って展開を図り始めていた時期でした。
この時期、日本のPLM業界やその取り巻く環境はどのような状態だったのでしょう。私の感覚ですが、2007年と2017年の言葉を比べてみました。
当時は、とにかく「PLM」という言葉が良く聞こえてきました。製品のライフサイクルに着目して、開発設計・製造・アフターメンテナンスに至るまで、一貫したデータの利用とデータの管理を行うことによって、QCD(品質・コスト・納期)の向上を目的にした考え方です。特に3D CADデータを使用しそのデータを全社展開し、そのデータの更新管理、新たに作られた3Dビュワーのデータ活用および管理、さらには他の「SCM」や「ERP」といったシステムの連携を目指した、規模の大きな話でした。
多くの大企業がそれに取り組んでおり、コンサルティング会社の講演も聞くことができたと記憶しています。私自身もNEXT3Dと言ったように、「3D CAD→CAE→ビュワー→公差解析→PDM・シミュレーション」という展開を、設計部門から全社展開に向けて構想開始していたところでした。
PLMとして全社をつないだ成果やその取り組みとして、「フロントローディング」や「コンカレントエンジニアリング」という言葉も良く聞いたものです。今では、少し飽きられたのでしょうか? 以前より聞く頻度が少なくなりましたが、PLMという概念は今でもなお生き続けています。
最近では「エコシステム」「デジタルツイン」という言葉を良く聞きます。以下は私の理解です。
デジタルツインに象徴されるように、デジタルエンジニアリングで行えることが、技術によって増えています。組み込み制御ソフトウェアと3Dモデルの連携、すなわち「PCの中で実機にように装置を動かすこと」も普及しつつあります。また最近のVR技術もその1つです。10年間、SF映画の話であったようなバーチャル空間での表現が可能になりました。このことからも、PLMとしての拡張性は大きく広がったと言えます。
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