3D CADの需要はどうなのでしょう?
CADベンダーのカンファレンスは今も大抵満員になります。10年前と比べ企業の数も増えていることもあるのでしょう。
カンファレンスで聴講できる内容の多くは、ユーザー事例講演となり、その内容は、大企業を中心とした3D CAD化への取り組みの、いわゆる「サクセスストーリー」で、大体は以下のような内容です。
発展的な内容としては、以下のような3D CADの関連ソリューションや3D CADの新機能の話となります。
3D CAD化へのサクセスストーリーは、これから3D CADを導入する企業や、導入間もないユーザーを対象にしています。発展的なお話は、これから3D CADを導入し定着したユーザーを対象としていることが多いです。
カンファレンスがいつも満員になるような状況ということは、まだまだ3D CAD導入を目指していたり、3D CADの立ち上げがうまくいっていなかったりする企業がいまだ多くあるということだと私は考えます。
うまくいく企業とうまくいかない企業には、どんな違いがあるのでしょうか。上場企業と中小企業の差なのでしょうか。
確かに3D CAD導入・立ち上げには、専任・兼任のいずれも、人員的な資源が必要です。社内のインフラ整備も必要になり、モノを導入するための投資も必要となり、その工数も負担する必要があります。このプロジェクトの要素でもある人・モノ・金については上場企業の方が優位でしょう。
しかし、中小企業の場合には、意思決定の早さと動きの早さという利点があります。私自身は、中小企業で3D CAD導入や3Dデータ活用の展開をやってきていることもあって、企業の大小だけが違いを生んでいるとは感じていません。企業自身の考え、人の問題、そしてベンダーとの関係が絡んでいるのではないでしょうか。私自身、3D CAD推進活動を経験する中では、そう感じてなりません。
最近、私の仲間の存在が大きくあります。仲間は社内にも社外にも存在します。社外の仲間は、ベンダー系のユーザーグループや、地元のモノづくりコミュニティーにいます。
MONOistのようなメディアからの情報発信やSNSの投稿がきっかけで情報交換が始まって、仲間が集まる現象は、10年前にはあまりありませんでした。情報があふれだし、コミュニティーが作られて、そこに集まった仲間によって知恵が集まり、精神的な助けにもなっています。また、今や「情報発信は地方の時代」とも思っています。
私はソリッドワークスワールドジャパン2017で、公差解析ツールの講演をお受けしました。ちなみに10年前も公差解析の話をしていました。10年前と今とで、設計者がやるべきことに変わりがないことを意味しています。
どんなに優れた加工ができるようになっても、設計根拠を決めて、品質・コスト・納期共にバランスのあるモノを作るための公差は設計者が決める必要があるということです。
またさまざまなツールが拡張され、設計者を支援するツールが、「単なる道具」から、そこにあって当たり前の「インフラ」へと変わりました。「ジェネレーティブ・デザイン(Generative Design)」といわれるトポロジー最適化よりさらに先にある「コンピュータによってデザインを行う」という方向への取り組みも始まっています。10年後にはそれが実現しているかもしれません。
しかし、今は設計者が「無から有を生む」という創造的な仕事をしています。システムは設計者を助けてくれますが、最終判断は設計者がするものです。それゆえ、設計者は「常に学んでいくこと」が必要です。
「どんなに優れた3D CADシステムを使うとしても設計者の学びに終わりはありません」
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