玉川氏は、KDDIグループへの参画を決めた理由を説明した。先述した通り、2年弱で7000以上の顧客を持つようになったソラコムだが、今後の課題として捉えていたのが「セルラーLPWAと5Gを用いたサービスをどれだけ早いタイミングで開始できるか」(玉川氏)だった。
ソラコムは、国内向け海外向けともにMVNO(仮想移動体通信事業者)として回線サービスを提供している。しかしセルラーLPWAや5Gといった、新しい通信技術については、その導入を自ら進める通信キャリアでなければ早期に利用することはできない。例えばKDDIは、2017年度内にセルラーLPWAを商用化する予定だが、これをMVNOに開放するタイミングがいつになるかは独立企業のソラコムには分からない。
しかし、ソラコムがKDDIグループに入れば、セルラーLPWAをより早期に利用できるようになる。2020年ごろの商用化が見込まれている5Gについても同様だ。玉川氏は「今までのやり方とは違う次元に入ったからこそ、KDDIグループに参画することにした」と語る。
なお、ソラコムは、KDDIによる連結子会社化の後も、会社組織や経営陣、ブランド、企業ビジョン、オフィスなどはそのままに、従来通りに事業を展開する。KDDIは、ソラコムの強みを最大限に引き出すべく、一定の独立性を維持していく方針のようだ。
今回のソラコムの買収をKDDI側で主導したのはバリュー事業本部だ。バリュー事業本部は通信以外の領域を担っており、主にサービスやアプリケーションの企画や開発を行っている。つまり、IoTを活用した新たなサービスを創出する上で、ソラコムとより緊密に連携していく必要があると判断したことになる。
実際には、バリュー事業本部だけでなく、法人向けビジネスを統括するソリューション事業本部を含めて、KDDI全社としてソラコムの買収にコミットすることとなったようだ。このためソラコムのトップである玉川氏のレポートラインは、全社の事業戦略を横串にして統括する経営戦略本部となっている。
両社が求めた今回の買収だが、果たしてKDDI、ソラコムともに成長することができるのか。今後の具体的な事業展開に注目したい。
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