ソラコムがユーザーイベント「Discovery 2017」を開催。基調講演に登壇した同社社長の玉川憲氏は、2つの新サービスの他、Sigfoxの国内を手掛ける京セラコミュニケーションシステム(KCCS)や独自のLPWAネットワーク技術を開発中のソニーとの提携など、新たな事業展開を矢継ぎ早に打ち出した。
ソラコムは2017年7月5日、東京都内でユーザーイベント「Discovery 2017」を開催した。基調講演に登壇した同社社長の玉川憲氏は、2つの新サービスの他、独自のLPWA(低消費電力広域無線通信)ネットワーク技術を開発中のソニーやSigfoxの国内を手掛ける京セラコミュニケーションシステム(KCCS)との提携など、新たな事業展開を矢継ぎ早に打ち出した。
ソラコムは2015年9月に、IoT(モノのインターネット)向けのMVNO(仮想移動体通信事業者)回線サービス「SORACOM Air」の提供を始めた。その後、回線サービスのグローバル化や拡充を進め、IoTを活用する上で求められるサービスの展開も拡大させている。玉川氏は「前回のDiscovery 2016の時はユースケースの数を約3000とお伝えしたが、この1年で約7000まで伸びた。ソラコムでIoTを試して、実際のビジネスにつなげているユーザーが増えてきていることもうれしい」と語る。
2017年5月以降のユーザー事例としては、大阪ガス、IHI、フジテック、三英社製作所、ローソン、日の丸自動車、テプコシステムズ、コニカミノルタ、ニューマインド、ハイク、ファームシップ、トリプル・ダブリュー・ジャパン、ダイドードリンコなどを挙げた。
玉川氏は「さまざまな顧客からの要望をお聞きする中で、さらに新たなサービスを投入する必要性を感じている」と述べ、主にデバイス側に関わる2つの新サービスを紹介した。
1つはIoTデバイス管理サービスの「SORACOM Inventory」だ。従来のソラコムのサービスでは、IoTデバイスに組み込まれたSIMカードの情報など回線を管理することはできても、IoTデバイスそのものを管理することはできなかった。SORACOM Inventoryでは、個別にアプリケーションを作り込むことなく、SORACOM Airで回線の管理を行うWebコンソール上で、IoTデバイスの状態や設定の管理、デバイスの再起動、コマンド発行、データの配置、各種メトリクスのモニタリングなどを行える。
なお、SORACOM InventoryにおけるIoTデバイスの管理には、OMA(Open Mobile Alliance)が標準化した、LWM2M(OMA Light Weight M2M)プロトコルを用いている。このため、IoTデバイスにLWM2Mのエージェントをインストールする必要がある。回線サービスに「SORACOM Air for セルラー」を利用している場合は、初期設定手順を簡略化できる。
SORACOM Inventoryは、2017年7月5日から「Limited Preview」として提供される。ソラコムに利用申請すれば、Limited Previewの期間は無料で試用できるという。
もう1つは、IoTデバイスがやりとりするパケットに対してさまざまな処理を適用できる「SORACOM Junction」である。回線サービスのSORACOM Airは、IoTデバイスとクラウドを直接つなげることで、IoTセキュリティの確保のしやすさを特徴の1つにしてきた。しかし、IoTデバイスそのもののセキュリティを担保することはできない。SORACOM Junctionは、「インスペクション」「ミラーリング」「リダイレクション」という3つの機能を提供しており、IoTデバイスのさらなるセキュリティ向上や通信の監視、通信の制御などが可能になる。
特にミラーリング機能では、トレンドマイクロのセキュリティVNF(Virtual Network Function)との連携により、IoTデバイスとの間の通信トラフィックに潜むセキュリティ脅威の可視化や制御が可能になるという。なお、SORACOM Junctionは「Public Beta」として2017年7月5日に正式にサービスを開始している。
なお、ソラコムのサービスはSORACOM Airから始まって、「SORACOM」の後に来る英単語がアルファベット順で並ぶように投入されてきた。今回、SORACOM InventoryとSORACOM Junctionが発表されたので、残りのK〜Zまで16文字のアルファベットに対応するサービスが今後展開される見込みだ。
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