ソラコムは、セルラー(携帯電話通信網)方式の回線サービスだけでなく、LPWAネットワークの活用にも積極的だ。920MHz帯の通信は用いるLoRaについては、2016年7月に実証実験キットを発売し、2017年2月には「SORACOM Air for LoRaWAN」として正式なサービスを開始している。
玉川氏は「LoRaでも、ゲートウェイとクラウドの通信にはセルラーを用いている。しかし、山間部などセルラーの通信が届かないエリアではどうすればいいのか」と課題を挙げる。そこで現在開発中なのが衛星回線を用いた通信だ。スカパーJSATとの協力により、2017年6月に実証実験を開始したところである。
さらに、ソラコムのサービスをLoRaにとどまらないさまざまなLPWAで利用できるようにパートナーシップを拡大していく方針だ。玉川氏は、ソニーが独自に展開する「ソニーのLPWA」と、KCCSが国内展開するSigfoxとの提携を発表した。
ソニーのLPWAは現時点で正式なサービスが始まっていないこともあり、まずは2017年7月に技術検証を始める計画だ。一方、既に東京23区や大阪市をカバーしているSigfoxについては、7月5日から「SORACOM Air for Sigfox」を提供する。セルラー方式のSORACOM Airと同様に、Webコンソールを通じて、Sigfoxによる通信を行うIoTデバイスの操作や管理を行える。
ゲストとして登壇したKCCS社長の黒瀬善仁氏は「Sigfoxのチャネルパートナーとしてソラコムが加わることで、ソラコムの充実したIoT関連サービスやさまざまなクラウドとの接続性が得られる」と提携の効果を強調する。
SORACOM Air for Sigfoxは、契約事務手数料とSORACOM Air for Sigfox の1年分の料金を含めたデバイスとして提供される。実証実験などに最適なセンサーキット「Sens’it」は8478円、オプテックスの「ドライコンタクトコンバーター」は3万9800円(いずれも税別)。1デバイスで1日当たり140回までのデータ送信が可能であり、ソラコムの「SORACOM Beam」「SORACOM Funnel」「SORACOM Harvest」の利用料金も含んでいる。その後は、1デバイス当たり年間1440円の利用料金がかかる(1年単位で契約。通信費やサービスの利用料金を含む)。
玉川氏は「ソラコムはあくまでIoTを広げていくためのプラットフォームだが、さまざまなパートナーとの提携が拡大することによって面白いことが起きている。Sigfoxはソラコムとつながることでクラウドとの接続性が向上した。リアルタイム予測分析プラットフォームを展開するブレインズテクノロジーは、ソラコムとつながることで通信接続の選択肢が広がった。これらのことから、当社のコーポレートスローガンである『世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ』の実現に近づいているように感じる」と語り、講演の最後を締めくくった。
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