AUTOSAR導入で期待される「再利用」と「自動化」を本当に実現するための条件AUTOSARを使いこなす(34)(1/4 ページ)

車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第34回は、AUTOSAR導入で期待される「再利用」と「自動化」を本当に実現するための条件について論じる。また、最新リリース「R24-11」の内容を簡単に紹介する。

» 2025年01月21日 07時30分 公開
[櫻井剛MONOist]

AUTOSARからのお知らせ

 2024年11月27日に、AUTOSARの最新リリース「R24-11」(Internal Release Number:R4.10.0)が発行されました。

 Classic Platform(CP)のR4.x系の最初のバージョンの発行が2009年ですので、もう15年続いていることになります。

 2024年12月5日には、そこでの改定内容と、次回リリース(R25-11)での展望を紹介するリリースイベントが開催されました。

 今回は、初の試みとして、各講演に日本語および中国語の字幕をご用意しました。これらの講演動画は、AUTOSAR公式Webサイトの「News & Events」で1月10日から公開されています。見逃してしまったという方、ぜひご覧ください。

 R24-11での改定内容につきましては、今回記事の後半で簡単に紹介してまいります。

 また、2025年5月27〜28日にベルギーのブルージュで開催予定の「16th AUTOSAR Open Conference」のチケット販売が開始されました。

 超早期割引の適用は終わりましたが、早期割引は3月まで適用されます。スポンサー募集も継続されています。会場での展示などをお考えの方は、ぜひスポンサーとしての参加をご検討ください。

 その他のイベントも各地で開催されています。詳細につきましては、以下のAUTOSARのWebサイトをご覧ください。

⇒AUTOSARのWebサイト

前回のおさらい:「コードジェネレーターのしもべ」

 では、前回の第33回「AUTOSAR導入でコードジェネレーターのしもべに? ARXMLはもっと利活用できる」の続きです。

 前回は、CPでのBasic Software(BSW)やSoftware Component(SW-C)を、さまざまな場面に当てはめつつ再利用(reuse)しやすくするために、AUTOSARでどのような対処/メカニズムが用意されているのか、そして、「場面」を表現する手段としてのAUTOSAR XML(ARXML)について解説し、併せて、ARXMLのような設定データが、「再利用可能なものに期待する振る舞い」や「それが投入されるコンテキストの情報」を多数含んでいるにもかかわらず、コード生成で使われるだけにとどまっていて、検証など他の場面での自動化にはまだあまり利用されていないという、大変残念な運用実態についてご紹介いたしました。

 このような運用実態は、「AUTOSAR CPのSWアーキテクチャを取り入れただけ」「もともと持っていた基本SW機能を、AUTOSAR CP BSWに置き換えて実現しただけ」にほぼ等しいでしょう。

 BSWやRTEの設定にはかなりの手間がかかりますし、それはコストに直結しますから、すぐに「AUTOSAR導入にはメリットがない」と言われるようになりますが、「そもそも目指すところ」を設定した時点で、この結果/評価に行き着くことはシステマチックに確定しています。

 実際、筆者が所属するイーソルが実施しているAUTOSAR CPに関する研修のQ&Aセッションで、ほぼ毎回(驚異の90%超です)いただく質問は、「どこまでAUTOSARに対応したら、準拠したといえるのか?」です。この問いも同様に、連載第4回でご紹介した「やらされAUTOSAR」の発想が起点であり、「AUTOSARを利用してどのような効果を得るのか」という考え方に切り替えなければ、同じ結末となることは不可避です(図1、図2)。

図1 図1 「AUTOSAR対応/導入」の意味[クリックで拡大]
図2 図2 AUTOSAR導入の効果の考え方[クリックで拡大]
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