ロームの新社長に東克己氏、工場再編含めた抜本的構造改革の断行で業績回復へ製造マネジメントニュース

ロームは、新たな代表取締役社長 社長執行役員に、同社 取締役 専務執行役員 品質、生産、汎用デバイス事業、モジュール事業担当の東克己氏が2025年4月1日付で就任すると発表した。

» 2025年01月20日 06時15分 公開
[朴尚洙MONOist]

 ロームは2025年1月17日、新たな代表取締役社長 社長執行役員に、同社 取締役 専務執行役員 品質、生産、汎用デバイス事業、モジュール事業担当の東克己氏が同年4月1日付で就任すると発表した。現在の代表取締役社長 社長執行役員である松本功氏は取締役を退任し相談役に就任する。

ロームの新社長に就任する東克己氏(左)と現社長の松本功氏(右) ロームの新社長に就任する東克己氏(左)と現社長の松本功氏(右)[クリックで拡大] 出所:ローム

 東克己氏は1964年11月10日生まれの60歳。1989年3月に名古屋工業大学を卒業してロームに入社。トランジスタ製品の品質管理を担当した後、アポロ電子工業(現ローム・アポロ)に出向し生産技術を学んだ。ローム本社に戻ってからはトランジスタ製品の企画や製造責任者などを経て、2013年6月に取締役 ディスクリート本部長に就任した。2017年7月に専務取締役 ディスクリート、オプト・モジュール担当、2019年9月に取締役 専務執行役員 事業・戦略担当、2020年6月に取締役 専務執行役員 COO 兼 営業統括、2021年1月に取締役 専務執行役員 COO 生産・品質・営業統括などを歴任した後、2023年6月にローム・アポロ 代表取締役社長に就任(現職)。2024年4月から取締役 専務執行役員 品質、生産、汎用デバイス事業、モジュール事業担当も務めている。

 今回の社長交代は、2024年度(2025年3月期)の通期連結業績見通しが12年ぶりの赤字になるなどロームの厳しい経営状況を打破するための抜本的な構造改革を早期に進める狙いがある。2020年5月に社長に就任した松本氏は、2022年度に過去最高売上高を更新するなどの成果を得たものの、2023年度以降は半導体市場の減速により業績が落ち込み、2024年度は上期の時点で既に営業赤字を計上している。

 松本氏は「このような非常事態の中で、安定的な利益を出せる事業基盤構築のための抜本的な構造改革を早期に進める必要がある。業績回復、立て直しのためにはいち早く新しい経営体制の下で抜本的な構造改革を断行する必要があると判断し、任期中ではあるが今回の社長交代を決めた。新たに社長に就任する東氏は強力なリーダーシップを持ち、われわれが注力するSiC(シリコンカーバイド)事業を推進するだけでなく、安定的に利益を出せる事業基盤を構築するのに必要な抜本的構造改革を断行するのにふさわしい人材と確信している」と語る。

 新社長に就任する東氏も「現在のロームを取り巻く状況は非常に厳しい。大きく変える、元気の出る会社に戻すこと。これには痛みを伴う改革も必要になるだろう。不退転の覚悟を持ってやり切ることが自身に与えられた使命だと思っている」と述べる。

 東氏は新社長として注力する3つの方針を挙げた。1つ目は「顧客とのコンタクト回数を増やす」である。「創業者(の佐藤研一郎氏)が言っていた『調べながら売り、売りながら調べる』を実践するためには、営業だけでなく全事業部一体になって、新しいもの、次に必要になるものを探していかなければならない」(東氏)。2つ目は「働き方を変える」だ。オンライン会議が浸透する一方で人と人の接点が希薄になっている状態の改善や、開発部が開発業務に集中できる体制の構築などを進める。3つ目は組織改革で、LSI事業部における開発本部と生産本部の分割や、パワーデバイス事業からのSiC事業の独立などを進める予定だ。

 なお、“抜本的構造改革”の主な施策としては、2024年上期決算説明会でも示されている生産拠点再編を2〜3年以内に完了させることを想定している。この生産拠点再編により、自社での生産重視の体制から、ファウンドリーやOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)への生産委託を大幅に増やしていく方針である。

ロームが2024年度上期決算説明会で示した収益性改善施策 ロームが2024年度上期決算説明会で示した収益性改善施策[クリックで拡大] 出所:ローム

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