「人とくるまのテクノロジー展2025」に見るカーエレクトロニクスの進化人とくるまのテクノロジー展2025レポート(1/3 ページ)

クルマの電子化および電動化を背景にカーエレクトロニクスの進化が著しい。「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」でも多くの半導体/電子部品メーカーが出展し、カーエレクトロニクス関連のさまざまな提案を行っていた。

» 2025年06月09日 06時00分 公開
[関行宏MONOist]

 クルマの電子化および電動化を背景にカーエレクトロニクスの進化が著しい。「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」(2025年5月21日~23日、パシフィコ横浜)においても、多数の半導体/電子部品メーカーが出展し、カーエレクトロニクス関連のさまざまな提案を行っていた。本稿では、それらの展示の中から幾つかピックアップしてレポートとしてお届けする。

CXPIの実アプリケーションレベルのデモを披露――東芝デバイス&ストレージ

 東芝デバイス&ストレージは、前回の「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」に引き続いて、車載ネットワークのCXPI(Clock Extension Peripheral Interface)に関する展示を行った。

 CXPIは日本自動車技術会が開発した日本発の規格であり、ISO 20794:2020として標準化されている。ビットレートは最大20kbpsとLINと同等だが、LINと比べてレスポンダーノードの応答性に優れており、例えばライトの点灯や消灯などの操作に対して速やかな反応が得られる。マルチファンクションステアリングやウィンカー、ドアミラー、ワイパー、ライトなどのスイッチから出るいわゆる「ジカ線」の集約が可能だ。

 東芝デバイス&ストレージの展示は、前回は評価ボードレベルだったが、今回はウィンカー付きドアミラーに組み込んだ実アプリケーションに近いデモを行った。SDV(ソフトウェアデファインドビークル)を想定してイーサネットをCXPIに変換するブリッジボードを介したミラーの開閉やウィンカーの点滅を制御できることを示した。

 CXPIドライバ/レシーバーIC「TB9032FNG」、CXPI搭載マイコンおよびCXPIインタフェースIC「TB9033FTG」をラインアップ予定であり、高いビットレートを必要としないボディー系ネットワークとして提案していく考えだ。

第2世代のCXPIドライバ/レシーバーIC「TB9033FTG」で構成したドアミラー制御基板 第2世代のCXPIドライバ/レシーバーIC「TB9033FTG」で構成したドアミラー制御基板。ドアミラーの開閉およびドアミラーに内蔵されたウィンカー(ミラーのオレンジ部分)の点滅のデモを行っていた[クリックで拡大]
イーサネットとCXPIの変換基板も展示した イーサネットとCXPIの変換基板も展示した。イーサネットAVB/TSNなどのインタフェースを備えたブリッジIC「TC9562XBG」やCXPIドライバ/レシーバーIC「TB9032FNG」で構成されている[クリックで拡大]

電源設計者向けの新製品を投入――アナログ・デバイセズ

 アナログ・デバイセズは製造/テスト工程向けソリューションの展示を強化した。ECUやセントラルコンピュータの電源設計者向け新製品が「LTPowerAnalyzer」である。同社の高機能アクティブラーニングモジュール「ADALM2000」と組み合わせて使用する。

 電源系の周波数応答特性(位相余裕測定)、過渡応答特性、インピーダンス測定およびFFTの測定が可能である。1A、10A、50A、100Aの電流プローブ(負荷)が付属する。

 車載用のプロセッサやAI(人工知能)アクセラレータは低電圧化と大電流化が進んでいて、電源系の設計の難易度も上がっている。同社は「LTpowerCAD」「LTpowerPlanner」「LTspice」などのツールを提供して電源設計をサポートしてきたが、「LTPowerAnalyzer」の投入により、静的解析だけでなく実回路の特性評価もサポートしていく考えだ。

アナログ・デバイセズが2024年秋にリリースした電源設計者向けの「LTPowerAnalyzer」 アナログ・デバイセズが2024年秋にリリースした電源設計者向けの「LTPowerAnalyzer」(青色の基板)。左端のアクティブラーニングモジュール「ADALM2000」に接続して使用する[クリックで拡大]
「LTPowerAnalyzer」を用いた過渡応答特性の測定例 「LTPowerAnalyzer」を用いた過渡応答特性の測定例。負荷電流(下側の波形)を0.5Aと1.5Aの間で増減させたときの電圧の変動(上側の波形)を示している。最大100Aの負荷電流で特性を把握できる[クリックで拡大]

 「EVAL-ADMX2001」は、高性能かつローコストなインピーダンスアナライザだ。DCから10MHzまでのインピーダンス測定に対応する。

 インピーダンスアナライザが一般的に数十万円以上するのに対し、EVAL-ADMX2001は周波数が10MHzが上限という制約はあるものの数万円と安価である。等価直列キャパシタンス、等価直列インダクタンス、等価直列抵抗、誘電正接(散逸係数)、Q値、インピーダンス、アドミッタンスなど18種類の測定モードを備える。

 電気化学インピーダンス分光法(EIS)を用いたバッテリーの特性評価、タッチパネルなどの容量性または結合性のセンサーの評価、半導体のCV特性の評価、電源回路の補償ネットワークの設計などに活用可能だ。

インピーダンスアナライザ測定モジュール「EVAL-ADMX2001」 インピーダンスアナライザ測定モジュール「EVAL-ADMX2001」(ピギーバックになっている基板部分)。数十万円の測定器と同等の精度で、LCR回路の特性を手軽に把握できる。信号源は16ビット、アクイジションは18ビットと高精度である[クリックで拡大]
EVAL-ADMX2001での測定例 EVAL-ADMX2001での測定例。横軸が周波数、縦軸がインピーダンス値である。全部で18種類の測定モードを搭載する[クリックで拡大]

 アナログ・デバイセズはこの他にも、車載アプリケーションのソリューションとして、低ノイズDC-DCコンバーター「SilentSwitcherシリーズ」の最新世代である「SilentSwitcher 3」や、映像信号をシリアルバスで伝送する「GMSL(ギガビットマルチメディアシリアルリンク)」などを展示した。

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