「人とくるまのテクノロジー展2025」に見るカーエレクトロニクスの進化人とくるまのテクノロジー展2025レポート(2/3 ページ)

» 2025年06月09日 06時00分 公開
[関行宏MONOist]

太陽光下でも正確に測距できる3D-TOFセンサー――ヌヴォトン テクノロジー

 ヌヴォトン テクノロジーはセンサー関連のソリューションを展示した。

 「KW33000」は2024年7月にリリースした車載向け3D-TOFセンサーで、レーザーではなく赤外線を光源に利用している。受光素子である5.6μm角のフォトダイオードに背景光信号を蓄積するメモリ素子を集積し、その情報を用いて背景光を除去する独自の方式を開発した。その結果、太陽光の明るさに相当する10万ルクスの環境でも正確な測距を実現している。

 また、同一フレーム内(60または120fps)で3D画像と2D画像(IR:赤外線)を同時に出力するため、動きに強い点も特徴である。居眠り検知、置き去り検知、ジェスチャー認識などへの応用を提案していく。

ヌヴォトン テクノロジーが開発した3D TOFセンサー ヌヴォトン テクノロジーが開発した3D TOFセンサー。背景光を除去する独自のテクノロジーにより、従来のイメージセンサーでは白飛びしてしまうような10万ルクス(晴天時)の明るさでも正確な測距を実現した[クリックで拡大]
3D TOFセンサーで撮影した映像 3D TOFセンサーで撮影した映像。モノクロの映像はIRセンサーで撮影した2D映像、右上の映像は3D-TOFセンサーで撮影した奥行き情報を含む映像である。距離情報として、手前側の人物が黄色で、奥側の人物が水色で表示されているのが分かる[クリックで拡大]

 「KM2NS001シリーズ」は、さまざまなセンサーの出力信号を統合するブリッジICである。1台の自動車に搭載されるセンサーの数や種類が増加する一方で、ECUに搭載されるマイコンのI/Oポートには限りがある。KM2NS001シリーズは、RGBカメラ/TOFインタフェース×4、マイク入力×4、スピーカー出力×2、I3Cインタフェース、CANバス、USB-C、シリアルインタフェースなどを備えていて、それらの情報を集約し、同期を取ったのちMIPI/USB-Cとして出力できる。

 小型IoT(モノのインターネット)機器向けのシンプルタイプ、FA機器向けのスタンダードタイプに加えて、動作温度範囲を拡大したオートモーティブタイプを2026年第2四半期にリリースする予定であり、車室内(インキャビン)のさまざまなペリフェラルを集約する用途に提案する。

ヌヴォトン テクノロジーのセンサー統合ブリッジIC「KM2NS001シリーズ」 ヌヴォトン テクノロジーのセンサー統合ブリッジIC「KM2NS001シリーズ」(赤い矢印部分)。さまざまなセンサーの出力を集約して、MIPIまたはUSB-Cとして出力する[クリックで拡大]

超精細方位分解能の4Dイメージングレーダー――コーンズテクノロジー

 電子部品商社のコーンズテクノロジーは、2019年に創業した米ゼーダー・ラボ(Zadar Labs)の4Dイメージングレーダー「zPRIME」と「zPULSE」を出展した。ソフトウェアデファインドレーダーという新たな技術に基づいた製品である。なお、4Dとは、縦、横、奥行きに加えて、相対速度を測定できることを表している。

 zPRIMEは76G~81GHzまたは60GHzを使用する。検知角度(FOV:Field of View)が120×24度のモデルの場合で、1000m以上先のトラック、または800m以上先の乗用車、または250m以上先の歩行者を検知する能力があるという。方位分解能が0.4度と極めて精細であることが特徴である。

 zPULSEは、小型の4Dイメージングレーダーでサイズは100×80×厚さ35mmと小さい。トラック検知距離は400m以上、乗用車は450m以上、歩行者は200m以上となっている(FOVが120×24度のモデルの場合)。方位分解能は1.5度である。

 独自の4D処理エンジンやソフトウェアスタック「zVUE OS」によってLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)並みの高い性能を実現しており、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)における点群データの取得にも応用が可能だ。耐環境性能に優れており、建機、農機、自律移動ロボットなどへの応用を提案する。

Zadarの4Dイメージングレーダー Zadarの4Dイメージングレーダー。左が方位分解能0.4度の「zPRIME」(140×103×厚さ36mm)、右が同1.5度の「zPULSE」(100×80×厚さ35mm)である。それぞれFOVが120×40度、120×50度、120×90度の3モデルがある[クリックで拡大]
コーンズテクノロジーの展示ブースの上方に設置された「zPRIME」の出力映像 コーンズテクノロジーの展示ブースの上方に設置された「zPRIME」の出力映像。ブース前の来場者一人一人を識別していることが分かる[クリックで拡大]

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