シューベルト氏はデータフュージョンについて「今後は外部から買ってきても構わない標準的な技術になる」と話す。
「自動車メーカーにとって重要なのは他社モデルとの差別化を図ることで、快適な自動走行や高速での作動などの開発に時間をかけようとしている。データフュージョンの良しあしが自動運転システムの出来栄えを決める部分があったのは事実だ。これまでさまざまな方式や手法が試されていたが、現在は同じアルゴリズムを使うようになってきている。統合処理の品質は安全を担保する上で重要ではあり、最終製品の性能にも影響するが、データフュージョンがどこの技術なのかは、ドライバーには関係のないところだ」(シューベルト氏)
また、センサーとは別にデータフュージョンを提供できるのがベースラボの強みであるという。「サプライヤーから、センサーなしでアルゴリズムだけを買ってくることはできない。特定のセンサーを前提としたデータフュージョンでは、新たにセンサーを追加したり変更したりすることが難しい。センサーと独立したアルゴリズムなので、拡張性を持たせられる。われわれはデータフュージョンに特化した企業として、さまざまな知見を得て技術を向上していき、よりよい高品質なアルゴリズムを提供していく」(シューベルト氏)
ベースラボは、完全自動運転に対応したデータフュージョンも視野に入れてツールの開発を進めていく。市街地の自動運転を実現する上で、シューベルト氏はデータフュージョンの2つの技術課題を挙げた。
1つは、市街地は高速道路と比べて検知すべき箇所が増える上、検知する必要があっても検知できない範囲が発生するため、センサーのデータだけでは実際の走行状況を把握することが難しくなる点だ。これに向けては、さらに高度な数学的アルゴリズムを適用していくとしている。
もう1つの課題は、市街地では交通の流れの予測が難しいことだ。質の良いデータフュージョンを行うためには、周囲の交通の流れに関するある一定のモデルを使う必要があるが、市街地では周囲の動きの予測が困難だ。そのため、データフュージョン自体も難易度が高くなる。これらの課題に対し、自社での研究開発と取引先との共同研究の両輪で対応していく考えだ。
自動運転の自動化レベルが上がるにつれて、データフュージョンに要求される安全性も厳しくなる。ドライバーが運転操作や周辺監視から離れる場面が増え、システム側の責任が増すため、どのような環境でも安全に走行できるセーフティークリティカルな技術が必要になるとシューベルト氏は説明する。
具体的には、自動車向けの機能安全規格であるISO26262に適合するとともに、性能限界や誤操作、誤使用などもカバーするSOTIF(Safety Of The Intended Functionality)に対応することを目指す。
「ISO26262は、システムが壊れた場合について定義しており、システムに欠陥がなければ安全だという考えに立つ。故障時のみ安全上のリスクが発生するという考え方だ。SOTIFは、他のドライバーの運転や天候など、システムのエラー以外の安全上のリスクを想定するものだ。システムの開発前に起こりうるリスクを検討し、起きた事態に対して適切に補正したり補完したりしなければならないとしている。SOTIFはまだ議論段階で、ワーキンググループでも模索が続いている。ただ、ISO26262は必要な規格だが、それだけで安全を確保するには十分ではないという点で合意している」(シューベルト氏)
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