遅れてきた本命、グーグルのIoTはアマゾンとマイクロソフトに太刀打ちできるかIoT観測所(34)(1/3 ページ)

これまで、マイクロソフトの「Azure IoT」、アマゾンの「Amazon Alexa」を紹介してきたが、グーグルの動向に触れないわけにはいかないだろう。さまざまなてこ入れ策を打ち出しているグーグルだが、IoTでアマゾンとマイクロソフトに太刀打ちできるのだろうか。

» 2017年06月30日 11時00分 公開
[大原雄介MONOist]

 前回はマイクロソフト(Microsoft)の「Azure IoT」の話を紹介したが、これに先立ち2017年2月の連載第30回ではアマゾン(Amazon)の「Amazon Alexa」を取り上げている。マイクロソフト、アマゾンと来ればグーグル(Google)の動向に触れない訳にはいかないだろう。

 2016年5月に開催された「Google I/O 2016」で登場した話題をまとめる形で、2016年7月の連載第23回に、主に「Google Home」について紹介している。今回はそのアップデートという位置付けだ。

IoT版Androidは「Project Brillo」から「Android Things」へ

 さて、まずは「Project Brillo」について説明したい。Project Brilloそのものは「Google I/O 2015」で発表された(関連記事:Google「Project Brillo」はどこまでApple「HomeKit」と派手に戦う?)。Brilloは端的に言えばAndroid OSをベースに、IoT(モノのインターネット)のエンドデバイス向けに不要な機能を削ぎ落としたもので、この上に「Weave」と呼ばれるデータ交換のスキームが提供される予定だった。

 このProject Brilloであるが、残念ながらあまり開発者のサポートを集めることが出来なかったようだ。実のところProject Brilloに対応した開発ボードは筆者の知る限りほとんど出なかった。NXPの「i.MX6UL」を利用したサンプルが展示され、その後ヴァリサイト(Variscite)が同じくi.MX6ULを搭載したSOM(関連リンク)でBrillo対応をうたったものの、それっきりという感じであった。

 こうしたことを受けてか、2016年12月にグーグルは「Android Things」を発表する(関連リンク)とともに、プレビュー版を同日からリリースする。

 このプレビュー版はインテル(Intel)の「Edison」とNXPの「Pico」、それに「Raspberry Pi 3」に対応しており、その後NXPの「i.MX6UL Argon」とインテルの「Joule」も追加されている。基本的にAndroid ThingはBrilloのリブランド、という言い方をしてもいいと思うのだが、決定的な違いは開発環境にある。

 Brilloの開発環境はC++であった(Javaが使えない訳ではないが、メインとなる環境はC++だった)が、Android ThingではこれがJavaに切り替わり、既存のAndroid開発者が手が出しやすい環境になった。また「Android Studio」やジェットブレインズ(JetBrains)の「IntelliJ IDEA」などの開発環境をそのまま利用してAndroid Thingでのアプリケーション構築が可能になっている。さらにOTA Updateに近い機能も新たに追加され、開発者は自分のAndroid Thingsデバイスに対して、Googleが提供するOSイメージのみならず、自分達が開発したアプリケーションのアップデートを、同じ様に書き換えられるようになった。

 機能、という観点で見るとAndroid ThingsはAndroid OSのサブセットとなった。省かれたものは、ユーザー入力あるいは認証資格情報が必要なAPIで、例えば「AdMob」とか「Map」「Search」「Sign-In」などはAndroid Thingsでは提供されない。

「Weave」は「Android Things」から独立

 これに併せてWeaveに関してもてこ入れがなされ、WeaveとAndroid Thingsが明確に独立した。WeaveはもちろんAndroid Thingsで利用可能だが、Android ThingsでなくてもWeaveを利用できるようになった。この方針に向けて、「Weave Device SDK」と「Weave Server」の提供が開始された。

 Weave Device SDKはAndroid Thingsよりももっと軽いもので、Weave Serverとの通信をサポートする。ハードウェアというかインフラとしてはLinuxの他、クアルコム(Qualcomm)の「QCA4010」、それとマーベル(Marvell Technology Group)の「MW302」がまずサポート対象となった。QCA4010とMW302は、どちらも「Cortex-M」ベースのマイコンにWi-Fiを組み合わせたもので、Android Thingsが対象とするよりもずっとハードウェアへの要求が低く、低コストのアプリケーションが実現できる。

 一方のWeave Serverはクラウドサービスとして提供され、Weaveデバイスの登録やデバイスへのコマンド伝達、状態の格納などが可能になった。

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