学校教育関係者の皆さんにも、JIS製図の大切さについてもお話しさせていただきました。それと併せて、3Dデータだけで部品が加工できる日は近づいているものの、2Dの図面は設計者の意図を示すためには今もなお必要不可欠だということ、図面を描く上では、加工方法についての知識も必要だという話もしました。
また間違った2D図面を描いてしまっていることもあるかもしれないことを、私の実体験に基づいて話をしました。
以降は、教育で押さえたい、特徴的な図面やモデリングについてお話をしていきます。
まず、以下の2つの図面をぱっと見て、その違いや間違いに気付くでしょうか?
3D CAD上では同じ形をした軸物ですが、2D図面上では一方は細くなっている方が左側に、もう一方はそれが右側になっています。
皆さんもきっとお分かりのように、正解は細い方が右側に来ている図面です。実はこれ、私が入社したばかりで、部品図バラシをした際に、先輩から初めて指摘されたことでした。軸物を加工する旋盤は、その材料をチャックする部分は左側にあり、刃物は右側にあります。軸の両端を加工するような場合は除きますが、一般的にはこれが基本となって、このような2D図面が正しいといわれるわけですね。
3D CADで軸物をモデリングする場合には、以下のように同一モデル(パーツ)であっても描き方が複数あります。ここではフィーチャを用いるタイプの3D CADを例に説明しています。
その他にも同一形状を作成する描き方はたくさんあります。
では、一体どれが正しいかどうかは、設計者の意図によります。私としては、「切削加工を基準に描いた方が正しいのではないかな」と考えます。もし3Dプリンタが今以上に普及したら、その発想も変わる時が来るかもしれませんがね……。
以下の図は寸法線と合わせた公差の表記方法です。その一例としてデータム面の指定を挙げてみました。左右の2D図面でそれぞれ示したものは異なる意味を持ちます。皆さん、お分かりでしょうか?
左側は、50mmの寸法を持つブロックの中立面をデータム面としてます。右側は、50mmの寸法を持つブロックの端面をデータム面としています。データムの書き方1つでその基準は変わってしまうというわけです。3D CADでモデリングしている時にどこを基準面として考えているのかということと同時に、正しい図面の描き方というものも教えていく必要があります。
学校教育においても、企業での教育においても、単に3D CADの操作習得を目的とするのではなく、基本的な加工技術や製図技術というものが3D CADを使うバックグランドであると考えることが必要だと私は確信しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.