機械メーカーで3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は、筆者が参加した「SOLIDWORKS World 2018」の3日目の内容を中心に紹介する。
ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(Dassault Systemes SOLIDWORKS:以下、ソリッドワークス)が米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催した年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS World 2018」(会期:米国時間2018年2月4日〜2月7日、以下SWW2018)に参加してきました。
前回はSWW2018のDay1とDay2(1〜2日目)のお話をしました。今回はDay3(3日目)とSWW2018の総括的なお話と、テクニカルセッションのお話をします。
これまでSOLIDWORKS WORLDでは、スニークレビューといわれる次期のSOLIDWORKSに実装される“かもしれない”機能の“チラ見せ”が開催最終日のDay3に行われてきました。スニークプレビューでは、ハリウッド映画っぽい仕立てのソリッドワークス社員(本社マーケティング部員)による寸劇でその機能紹介が行われてきて、私も毎回楽しみにしていました。
今回のSWW2018では初日から毎日、“チラ見せ”が行われました。ゼネラルセッション参加者をくぎづけにしようという意図だったのでしょうか。私としては毎日、寸劇が見ることができてとてもよかったかな……(笑)。詳しくは、MONOist編集部の朴記者の記事「俺だって語りたい!「SOLIDWORKS 2019」の新機能とは」に、次期製品の情報と併せて、寸劇についても書かれていますので、こちらをお読みください。
今回は、私が注目しているSOLIDWORKSの機能数点についてお話します(イベント当日、実際に発表された順序とは異なります)。
まずは「アセンブリーおよび大規模アセンブリー」についてです。
マルチボディーはその特徴として、1ファイルに複数のパーツ情報を持つことができます。一方アセンブリーそのものでは、パーツの座標データなどは持つものの、パーツのジオメトリ情報などはパーツファイル自身が持っています。マルチボディーに比べると、アセンブリーの情報量は大きくなります。
以下に「SOLIDWORKS 2018(以下、SW2018) SP1.0」で両者のデータを比較した例を挙げてみます。同等なモデルにおいて、アセンブリ―よりもマルチボディの方が軽くなることが分かります。
しかしマルチボディーにおいては、SW2018でもまだ干渉チェックに対応していません。
今後、マルチボディ―での干渉チェックも実現すれば、アセンブリーとしての基本機能を損なうことなくハンドリング性が良くなるので、より便利に使えそうだと私は考えています。
アセンブリーファイルの改良点としては以下です。
この図の状態ですが、これまでは、「見ることはできた」ものの「整理はされていない」という状態でした。上図では、合致のError(エラー)、Suppressed(抑制中)のもの、OverDefined(重複)がフォルダに集めることでグループ化できています。これはその後の処理を行いやすくできそうな気がします。
他にも大規模アセンブリーに対する機能強化の話が多く見られました。私の推測ですが、このような機能強化は、3DCADによる設計がうまくできるようになった一方で、そのデータ量の増大や部品数の大規模が進んでいる中での、パフォーマンス改善やオペレーション改善といったものがユーザーより求められている結果なのでしょう。会場で話をした知人より、「これまで不向きとされてきた重工業的な設計においてもSOLIDWORKSによる設計は確立されてきている」という言葉もありました。
SW2018より、SOLIDWORKS Simulation Professional以上にトポロジースタディーが実装されました。ソリッドワークスでもトポロジー最適化が可能になっています。この機能強化の話がありました。
私も既にトポロジースタディーの評価を行っていますが、トポロジースタディーで得られた結果は、3Dプリンタで出力することはできても、3DCADデータとして利用するためには、その結果の3D形状を参考にしながらモデリングにすることや、いったん2D図面化を行ってからその形状を3Dモデル化する必要がありました。トポロジースタディー結果の形状は穴や複雑な形状で構成されています。自由曲面や中空穴も多く見られます。
今は3D形状として確認するには、トポロジースタディー結果をソリッドボディーとしてエクスポートするしか方法はありません。メッシュスライシング機能によって、任意箇所の断面形状を得られることは、その後の3Dモデル化を行う上で有効な方法かもしれません。
他にも多くの機能強化がSW2019で実装されるかもしれません。それらを、2018年夏に開催されるだろうβプログラムで評価できることを、今から楽しみにしています。本当はαテストの参加で、評価ができると良いのですが。
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